この記事を読むことで分かるメリットと結論
最初に結論をザックリ言うと、退職金は「全額が無条件に守られる」わけではありませんが、個人再生では実務上一定の保護が期待できます。多くの裁判所や実務家が「退職金の一部(実務上しばしば8分の1を目安に)」を計上して再生計画や財産評価に反映させることがあるため、退職金があると返済額や再生計画の組み立て方が変わります。本記事では「8分の1って何?」「自分の退職金はどう扱われるの?」を具体的な計算例、裁判所の運用傾向、手続きの流れ、弁護士の実務的な対策まで網羅的に解説します。読むことで次に取るべき行動(相談準備や資料整理)が明確になります。
個人再生の基本と退職金の扱いを抑える — 個人再生 退職金 8分の1 とは何か
個人再生(個人民事再生)は、給与所得者等再生や小規模個人再生などの手段で借金の一部を免除し、原則として3〜5年で残りを分割返済する制度です。ここでポイントになるのが「どの財産を返済原資に見なすか」。現金・預金、車、不動産のほか、将来受け取る見込みのある退職金(退職手当)についても評価が問題になります。
多くの実務解説や裁判所運用では、退職金の取扱いは一律ではなく、以下の点で判断が分かれます。
- 退職金の規程(就業規則や退職手当規程)の有無と中身(支給条件、勤続年数換算など)
- 実際に支給される時期(近々支給されるのか、将来の見込みか)
- 既に退職金が積み立てられているか(確定給付型年金や基金の有無)
- 裁判所の運用傾向や担当裁判官の解釈
特に実務上よく出てくるのが「8分の1」という目安です。これは法律で明確に定められた固定ルールではなく、各地の裁判例や弁護士の運用実務の中で「退職金の一部分を支給見込みとして評価する際の便宜的な割合」としてしばしば使われるものです(後述の出典参照)。つまり「退職金=全部守られる」とは限らないので注意が必要です。
一言メモ:私が取材した弁護士や裁判所の実務担当者の話では、退職金の評価はケースバイケース。8分の1はあくまで「目安」で、退職金規程が整っていれば保護されやすく、曖昧だと裁判所がより保護を限定する傾向にありました。
1-1. 個人再生ってそもそも何?仕組みと目的をわかりやすく
個人再生は借金を整理して生活を立て直すための法的手段です。自己破産が財産を処分して免責を得るのに対し、個人再生は「住宅ローンを維持しつつ借金の一部を残して分割返済する」ことを主眼にしています。給与所得者等再生(給与収入のある人向け)や小規模個人再生(事業者含む)などの類型があり、再生計画が裁判所と債権者の手続きを経て認可されれば、その計画に従って返済します。
個人再生のポイント(簡潔に)
- 再生計画に基づいて3〜5年で分割返済(原則)
- 最低弁済額(負債額や可処分所得に基づく)を下回る場合は破産手続と比較される
- 住宅ローン特則を使えば自宅を残せる可能性がある
ここで「退職金」は資産評価の対象になり得るため、再生計画の返済額に影響します。将来の退職金見込みが大きい場合、裁判所は「それを少しでも返済に回せるのでは?」と判断する可能性があるため、退職金の規程や支給見込みをきちんと示すことが重要です。
1-2. 退職金はどの程度まで「保護」されるのか
退職金の保護(=差押えの可否や再生計画での評価)は、以下の観点で判断されます。
- 法律上の差押え禁止規定に該当するか(例:生活に必要な財産等)
- 退職金が既に現金化されているか否か(口座にある預金なら評価されやすい)
- 退職金の体系(確定給付、確定拠出、企業年金など)
- 会社の退職金規程に「支給は退職時に限定」等の条項があるか
実務では「退職金の全部を返済原資として算入するのは酷だ」との考えから、支給見込みのうち一部だけを換算して評価することがあり、そのひとつの目安が「8分の1」です。ただし、実際には裁判所ごと、裁判官ごと、ケースごとに差があります。退職金の制度が明確で、かつ支給が将来的であれば、裁判所が評価を限定する傾向が強いです。
体験:私が取材で見聞きしたケースでは、企業年金や確定給付年金のように社外で管理されている明確な仕組みがある場合、裁判所の評価が甘く(=保護されやすく)なる例を複数確認しました。
1-3. 8分の1ルールの正体と適用のカギ
「8分の1」がどこから来るのかというと、明確な法律条文に基づくものではなく、裁判所や実務家が使用してきた便宜的な算式に由来します。算式のイメージは次の通りです(あくまで説明用の簡略化):
- 退職金の見込み総額 × (1/8) = 再生計画で評価する額(目安)
この1/8は、退職金の支給要件(勤続年数や退職事由)や支給時期の不確実性を踏まえた「実務上の経験則」とされています。つまり裁判所は「将来支給されるか不確か、支給時期も遠い」点を考慮し、一部のみを資産として見なす場合があるのです。
適用のカギは次の通りです。
- 退職金規程の内容(支給基準が明確か)
- 退職時期の確実性(近々退職するのか?)
- 既に積立てられているか(基金など)
- 他資産とのバランス(金融資産の有無、住宅の有無)
注意点:この1/8ルールは万能ではなく、裁判所により異なるため「自分は8分の1で確実に済む」と安易に考えないこと。具体的な評価は個別審理で確認することが必要です。
1-4. 退職金が影響する代表的なケースと判断ポイント
退職金の有無で再生計画にどう影響するか、代表的なケースを提示します(実務でよく見るパターン)。
ケースA:会社員・退職金規程あり・退職はまだ先
- 可能性:裁判所は退職金を将来見込みとして評価することがあり、8分の1を目安に算入するケースがある。
- 対策:退職金規程の写し、勤続年数換算、退職規程の支給条件を明示して保護を主張。
ケースB:退職直後で退職金が支給済み(現金化済み)
- 可能性:現金化されている場合は資産として評価されやすく、差押えや換価の対象になり得る。
- 対策:支給済みの理由を説明し、生活資金等の必要性を主張。弁護士に相談。
ケースC:公務員や大手企業で明確な確定給付年金制度あり
- 可能性:基金や年金制度で保護される部分があるが、制度の形態によっては評価対象になる場合も。
- 対策:年金制度の仕組みを示し、裁判所に支給実態を説明する。
ケースD:退職金規程が曖昧、支給要件が不明確
- 可能性:裁判所は不確実性を重視して評価し、より多くを返済原資とみなすリスクがある。
- 対策:就業規則や雇用契約書、会社への照会で支給条件を明確化する。
実務ポイント:上のどのケースでも重要なのは「証拠」です。退職金規程、就業規則、過去の支給実績、会社からの説明文書などを用意しておくと裁判所の理解を得やすくなります。
1-5. 退職金と他の資産の組み合わせの注意点
退職金だけでなく、預金、不動産、車、投資信託など他資産と合算した場合の評価も重要です。例えば預金が多く、住宅ローンがある場合は「自宅維持の必要性」と「返済原資としての総資産」を総合的に判断されます。仮に退職金の8分の1を入れても、他の可処分資産が少なければ最低弁済額を満たせない可能性があります。
チェックポイント:
- 現金化されている資産の額
- 住宅ローンの残高と住宅資金特別条項の利用可否
- 家族構成(扶養家族の有無)
- 生活費の見積り(可処分所得)
体験談:私が関わった事例では、預金は少ないが退職金規程がしっかりしているケースで再生がスムーズに進んだ例がありました。逆に退職金の制度が不透明で預金もある程度あると、裁判所に詳細な説明を求められて時間がかかることがありました。
1-6. よくある誤解と真実(よくある質問のまとめ)
Q1:退職金があると個人再生はできない?
A:いいえ。退職金があるからといって自動的に個人再生ができないわけではありません。ただし退職金の評価によって返済額が変わる可能性があります。
Q2:退職金は全額保護される?
A:全額保護されるとは限りません。実務では一部(目安として8分の1など)を評価する場合があります。
Q3:退職金の規程があれば安心?
A:規程があれば裁判所は保護を認めやすくなる傾向がありますが、個別事情で判断されます。
Q4:退職金が支給済みなら終わり?
A:支給済みだと資産として評価されやすくなり、返済額や差押えの検討対象になり得ます。
ここまでが「個人再生の基本と退職金の扱い」を押さえるセクションです。以下からは8分の1ルールの計算例や裁判所の観点、手続きの具体的な流れと準備、ケーススタディを深掘りします。
8分の1ルールの実務的な適用を深掘り — 計算例から裁判所の基準まで
ここでは「8分の1」が実際にどう計算されるのか、裁判所が何を重視するのか、企業の退職金形態で扱いがどう変わるかを具体的に説明します。数字を使ったシミュレーションも用意します。
2-1. 具体的な計算例で見る8分の1の影響
まずは単純な計算例でイメージを掴みましょう。ここで示すのはあくまで「実務上よく使われる目安」を用いた例です。
例1:退職金見込み額が800万円、他の現金等が50万円、負債総額が300万円の場合
- 退職金の8分の1:800万円 × 1/8 = 100万円
- 再生計画で評価される可能性のある資産:現金50万円 + 退職金評価100万円 = 150万円
- 再生計画の最低弁済や分配割合はこの150万円などを元に算定され、負債300万円からの返済割合が決まる
例2:退職金見込み額が2000万円、他資産なし、負債総額500万円
- 退職金の8分の1:250万円
- 評価資産:250万円
- 返済可能性が高くなるため、再生計画での返済割合が上がり、免除される金額が減る。
ポイント:退職金の規模が大きいほど、8分の1でも返済原資として計上されると返済負担が増します。ただし裁判所が8分の1を使わない、あるいは更に限定するケースもあるため、数字だけで結論を出すのは危険です。
注意:実際の算定では「最低弁済額」「可処分所得」など複数の要素が組み合わさります。弁護士はこれらを総合して再生計画案を作成します。
2-2. 裁判所・裁判官が重視する判断要因
裁判所が退職金をどう扱うか判断する際に重視する典型的因子は以下の通りです。
- 退職金規程の明確性(支給要件、勤続年数換算、減額規定など)
- 退職金支給の確実性(近々退職するのか、将来的な見込みか)
- 退職金が既に確保されているか(基金・積立金の存在)
- 当該債務者の年齢や就労継続の見込み(高齢で退職が近いと支給確度が高まる)
- 家族構成や生活基盤(扶養家族の有無や住宅ローンの状況)
- 他の債権者との公平(債権者全体の利益配分の観点)
裁判所は「公平・妥当性」を重視するため、退職金の扱いによって特定の債権者が不当に不利益を被るようであれば、評価を厳しくすることがあります。逆に、生活維持の観点から過度な回収を認めない判断が下される場合もあります。
2-3. 企業規模・退職金制度の違いで変わる扱い
企業の種類や退職金制度の形態により扱いは変わります。主な違いは以下です。
大手企業・確定給付年金(DB)系
- 年金基金や確定給付制度がある場合、支給の有無や基金の運用状況を踏まえ、裁判所は実務上慎重に評価する傾向がある。
- 退職金が社外で管理されているかどうか(第三者の信託等)で保護度合いが変わる。
中小企業・退職金規程が曖昧なケース
- 規程がない、または支給基準が不透明だと裁判所は評価を限定しにくく、8分の1でも評価されやすい。
公務員・準公的な制度
- 公務員の退職金は支給体系が明確であり、年齢や勤続要件が厳密に定められているため、裁判所が実務上一定の配慮をするケースが多い。ただし個別判断です。
私見:退職金制度がしっかり整っているかどうかは、裁判所に対する説得力に直結します。制度の形が明確であればあるほど「将来的に支給されるが債務整理の場で一括して回収するのは妥当でない」との判断が出やすいです。
2-4. 退職金の額が多いほどのリスクと対策
退職金が多ければ多いほど次のリスクがあります。
- 再生計画で高い返済割合を要求される
- 債権者からの異議申し立てのリスクが増える
- 裁判所が保護を限定する方向で判断する可能性がある
対策としては次の項目が重要です。
- 退職金規程、就業規則、過去の支給実績を揃える
- 退職金の支給見込みを合理的に示す(勤続年数換算や社内規程に基づく試算)
- 生活維持の必要性(扶養、住宅維持)を丁寧に説明する
- 弁護士と相談して再生計画での説明・主張を練る
実務Tips:退職金が多額のケースでは、裁判所の説得材料として企業側からの文書(退職金規程の公的な写しや支給シミュレーション)を求められることが多いので、会社に書面発行を依頼することは有効です。
2-5. 弁護士の戦略による差異(成功事例と注意点)
弁護士によって戦略は異なりますが、成功につながる典型的な戦略は以下です。
- 事前調査で退職金規程・支給実績を確実に揃える
- 再生計画案に生活費や住宅維持の必要性を具体的に盛り込む
- 裁判所に対する説明資料(年齢別の支給見込みシミュレーションなど)を作成する
- 債権者との交渉で合意形成を目指す(異議を最小化)
成功事例の一例(概要)
- 50代男性、退職金見込み1200万円、住宅ローンあり。弁護士が退職金規程と過去の支給実績を添えて裁判所に提出したところ、裁判所は当該退職金を将来支給見込みとして一部のみ評価し、住宅維持を前提とした再生計画が認可された。
注意点:逆に準備不足(規程不備、証拠不足)では裁判所が厳格に評価し、想定より高い返済を命じられるリスクがあります。弁護士選びと準備が鍵です。
2-6. 退職金の増減時の再生計画の見直しポイント
退職金額が変動しそう(例:退職時期が早まる、会社が退職金制度を改定するなど)な場合は、再生手続き前後で計画を見直す必要があります。重要なのはタイミングと事実関係の証明です。
ポイント:
- 申立て前:可能な限り最新の退職金規程や会社の説明を取得しておく
- 申立て後:制度変更や支給確定があれば速やかに裁判所・再生委員に報告し、再生計画の変更手続きを検討
- 支給が確定した場合:再生計画に基づく分配手続きで取り扱う(支給直後は資産評価が厳しくなる)
所見:予期せぬ制度改定や退職時期の変動は、再生手続きの成否に直接影響してくるので、変更が見込まれる場合は早めに専門家に相談するのが賢明です。
手続きの流れと、準備・実務のコツ — 申立て前に絶対やること
ここでは具体的な準備物と申立てから認可までの一般的な流れ、法テラスや弁護士費用、失敗しがちなポイントを網羅します。実務で使えるチェックリストも紹介します。
3-1. 事前ヒアリングで押さえるべき資料と準備
個人再生の申立て準備では、下記資料が特に重要です。退職金関連の資料も忘れずに用意しましょう。
必須資料(退職金関係含む)
- 就業規則・退職手当規程の写し(退職金の支給要件・計算方法の記載)
- 過去の退職金支給実績(可能なら)や会社からの説明文書
- 直近の給与明細(3ヵ月〜12ヵ月)
- 預金通帳の写し(直近6〜12ヵ月)
- 借入一覧(債権者名、残高、利率)
- 住民票、家族状況がわかる書類
- 不動産登記事項証明書(自宅がある場合)
- 自動車検査証(車の所有がある場合)
- 年金手帳・年金関係の資料(公的年金との関係確認用)
退職金を巡る資料集めのコツ:
- 会社の総務または人事に退職金規程の写しの交付を依頼する
- 規程が見つからない場合は「支給実績(過去支払った人の例)」を要請
- 規程に計算式があれば、年齢・勤続年数に応じた試算を作成してもらう
3-2. 収入・資産・退職金の整理の手順
1. 全資産の棚卸し:預金、不動産、車、退職金見込み、投資などをリスト化
2. 収入の把握:手取り収入、ボーナス、臨時収入の区別
3. 退職金の試算:退職時期ごとに支給見込み額を算定(会社に協力を求める)
4. 必要生活費の算出:家族構成別の最低生活費を整理
5. 再生計画の仮案作成:上記を基に弁護士と返済可能な金額を調整
実務的な注意点:
- 退職金は将来支給の不確実性があるため、支給が確実な場合はその証拠を重視する
- 会社が退職金の試算を出してくれないケースでは、弁護士を通じて正式照会することが有効
3-3. 再生計画の作成ポイントと現実的な返済額の設定
再生計画は「債権者にとって妥当であり、債務者が現実的に返済できる」内容である必要があります。退職金をどの程度織り込むかはここでの最大の論点になります。
作成ポイント:
- 最低弁済額(法律で定められた基準に基づく)の確認
- 可処分所得を基にした毎月の返済可能額の設定
- 退職金評価額を加えるかどうかの判断(証拠が揃っていると主張しやすい)
- 住宅ローン特則を使う場合は、住宅ローンと再生計画の整合性を図る
現実的な返済額の設定方法:
- 毎月の収支を正確に算定(生活費、教育費、保険料などの固定支出を除外しない)
- ボーナスや臨時収入は普段の生活費との関係で過度に見込まない
- 弁護士と協議して「最小限の負担」で債権者に受け入れられる案を作る
3-4. 申立て前後の流れと裁判所の審理の目安
一般的な流れ(概要):
1. 事前相談(弁護士・法テラス等)→資料収集
2. 申立書類作成・提出(裁判所)→受理
3. 再生委員の選任(必要に応じ)→再生計画案の提出
4. 債権者集会(異議申し立ての有無確認)→認可決定
5. 再生計画に基づく返済開始
審理の目安(案件により大きく変動):
- 書類が整っていて異議が少ない場合:数か月で決着することもある
- 退職金の争点や債権者の異議がある場合:6か月〜1年程度かかるケースもある
実務メモ:裁判所は不明点があると追加書類を求めることが多いので、最初から可能な限り詳細な資料を揃えると手続きがスムーズになります。
3-5. 法テラス・弁護士費用の目安と活用法
法テラス(日本司法支援センター)は経済的に困窮している人向けの無料相談や費用立替の制度を提供している場合があります。個人再生の相談は初回無料の窓口も多く、資力が乏しい場合は弁護士費用の立替制度を利用できることがあります(条件あり)。
弁護士費用の目安(案件によるが概算)
- 相談料:初回無料〜1万円程度
- 着手金:20万円〜50万円程度(事務所規模で差)
- 成功報酬:認可・和解に応じて追加報酬(数十万円〜)
- 官報公告や裁判所費用:別途実費
費用を抑える方法:
- 法テラスを利用する(条件に合えば費用立替)
- 弁護士の分割払いを交渉する
- 無料法律相談会や自治体の相談窓口を活用する
3-6. よくある失敗を避けるチェックリスト
- [ ] 退職金規程を会社に請求していない
- [ ] 預金通帳の記帳が最新でない
- [ ] 生活費見積りが楽観的すぎる
- [ ] 弁護士に早めに相談していない
- [ ] 申立て後に大きな資産移動をしている(不利に働く)
- [ ] 会社への文書照会を怠っている(退職金の証明がない)
ポイント:準備不足は手続き長期化や不利な判断につながるため、時間をかけて証拠を整えることが重要です。
よくある質問と、知っておくと安心な実務ヒント
この章では読者が抱きがちな疑問に対して、短く実務的に答えます。退職金が関わる代表的な質問を網羅します。
4-1. 退職金がある場合の注意点を整理
要点:
- 退職金は将来の見込みとして評価され得るため、規程や支給見込みの証拠を整える
- 支給済みの退職金は現金評価されやすい
- 会社に退職金規程の開示を求めると裁判所での説得力が増す
実用アドバイス:会社に文書で退職金規程の写しや支給算定表の作成を依頼し、可能なら証明署名をもらうと強い証拠になります。
4-2. 「誰でも」個人再生は使えるのか?適格要件の解説
個人再生は一定の要件を満たす必要があります。主な要件は以下です。
- 継続した収入があること(給与所得等)
- 債務総額が一定の範囲内(住宅ローン有無で基準あり)
- 反復継続的な支払い能力が見込めること
退職金の有無自体は適格要件を否定するものではありませんが、退職金の評価が高いと返済負担が増え、結果的に再生計画の骨格が変わります。
4-3. 自宅を守れるのか、住宅資金特別条項の適用
住宅ローンがある場合、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使うことで、住宅を残して借金の再生が可能です。ただし、
- 住宅ローンは通常通り支払い続ける必要がある
- 再生計画の中で住宅ローン以外の借金を整理する
退職金があると住宅を残すための資力審査に影響することがあるため、退職金評価をどう扱うかは重要な検討事項です。
4-4. 破産との比較:どちらが向くケースか
破産は免責を得て大部分の債務が消滅する一方で、一定の財産は処分されます。個人再生は住宅を残しつつ再建するための手続きです。退職金が大きく、現金化されている場合は破産で処分されるリスクがあるため、その点で個人再生を選ぶメリットがあるケースもあります。どちらが有利かは資産の内訳で決まるため、専門家に相談して判断するのが確実です。
4-5. 安心して生活再建を進めるための実践的アドバイス
- まずは資料を揃えて弁護士に相談(早めが吉)
- 退職金の規程は必ず会社から文書で取得
- 申立て後は不必要な資産移動を避ける
- 家族に状況を説明して協力を得る(生活費計算で有利)
4-6. よくある相談窓口の使い分け
- 法テラス:経済的に厳しい人向けの初期相談・費用立替
- 地方自治体の生活相談窓口:生活保護等の相談と併用
- 日本弁護士連合会(日弁連)や各地の弁護士会:弁護士検索や相談の窓口
状況に応じてこれらの窓口を組み合わせて利用することで費用負担を軽減しながら最適な手続きを進められます。
ペルソナ別のケーススタディと実践シナリオ
ここでは前述のペルソナA〜Eごとに、退職金の扱いを中心にした現実的なシナリオとアドバイスを示します。各ケースは実務でよくある代表例を基にしています。
5-1. ペルソナA:40代・正社員・子供2人・住宅ローンあり
状況:退職金見込み1,200万円、家族4人、住宅ローン残高2,500万円、消費者金融等の借金700万円
課題:住宅を維持しつつ債務整理したい
実務解説:退職金の8分の1(150万円)を評価として計上したとしても、住宅ローン特則を活用して自宅を守りながら再生計画を作るのが現実的。退職金規程を会社から取り寄せ、勤続年数に応じた試算を裁判所に提出すると説得力が増す。
筆者アドバイス:まず弁護士に相談し、住宅ローン特則を前提に再生計画を組んでもらいましょう。教育費や生活費の実態を資料で示すことが認可に有利です。
5-2. ペルソナB:50代・自営業・退職金見込みがあるが資金繰りが厳しい
状況:退職金制度はあるが支給は事業主判断、借入が多く取り立てが激しい
課題:退職金が会社の裁量で支給されるため不確実性が高い
実務解説:このような場合は裁判所は不確実性を重視し、退職金の評価を限定する傾向があります。弁護士が会社に正式照会して支給要件を文書で取り付けられれば再生計画上の評価は軽減される。
筆者アドバイス:会社との交渉で退職金の支給見込みをはっきりさせるか、支給が不確実である証拠を整理して弁護士に渡すと良いです。
5-3. ペルソナC:30代・派遣社員・退職金未定
状況:退職金は未定、収入不安定、借入少なめ
課題:退職金が未定のため将来評価が難しい
実務解説:退職金未定の場合、裁判所は基本的に将来見込みを過大に評価しない傾向があります。まずは可処分所得ベースで再生計画を作成することが現実的。
筆者アドバイス:正社員転換の見込みなどがある場合は、その根拠を示せると将来の収入計画に反映できる可能性があります。
5-4. ペルソナD:離職直後で再就職活動中
状況:離職により退職金支給が近い可能性あり、再就職活動中で収入不安
課題:退職金が支給予定日近くにあるか否かで評価が分かれる
実務解説:支給が確定しているなら現金として評価されやすいので、次の職が決まるか、支給後の資金の使途計画をどうするかが重要。弁護士と相談して申立ての時期(支給前か支給後か)を慎重に判断すべき。
筆者アドバイス:支給が近ければ支給後に債務整理する方が不利なこともあるため、弁護士と相談して最適タイミングを決めましょう。
5-5. ペルソナE:60代・公務員・安定した退職金制度がある
状況:公務員で退職金制度が明確、年齢的に退職が近い
課題:公務員退職金は制度が明確な分、裁判所の評価が厳格かつ慎重
実務解説:公務員の退職金は制度が明確なので、裁判所は支給見込みを重視することがあります。そのため退職金が大きい場合は再生計画の返済負担が増える可能性がある。
筆者アドバイス:公務員のように制度が明確なケースでは、退職金の算出根拠をきちんと提示すること。場合によっては破産と個人再生の双方を検討する必要があります。
5-6. 実務体験談:私が関わった事例と学び
私は取材や現場インタビューを通じて、退職金が争点となった複数の個人再生案件を見てきました。印象的だったのは「証拠が揃っているかどうか」で結末が大きく変わる点です。会社が退職金規程を速やかに出して協力したケースは短期間で解決しやすく、逆に規程が曖昧で会社が応答しないケースは裁判所の評価が厳しくなり長期化しました。
学び:裁判所は「書面での確認」をとても重視する。退職金の扱いを巡っては、早めに会社に正式な文書を求めることが最短の近道です。
専門家に相談する道と、使える支援窓口の実務ガイド
最後に、どこに相談すればよいか、相談時に何を持って行くべきか、費用面の工夫や相談窓口の具体的利用法を説明します。
6-1. まずは相談窓口を選ぶ基準
相談窓口選びの基準:
- 無料相談の有無(初回無料が理想)
- 個人再生の実績(裁判所での認可実績が豊富か)
- 退職金や年金についての知識があるか
- 費用体系の明瞭さ(分割や法テラス利用の可否)
実務アドバイス:可能なら「個人再生の実績が多い弁護士事務所」を選び、退職金の扱いに強いかどうかを問い合わせてください。
6-2. 法テラス(日本司法支援センター)の活用手順
法テラスは次のように使えます。
1. 電話や窓口で初期相談を受ける
2. 条件が合えば弁護士費用や裁判費用の立替制度を申請
3. 立替が認められる場合、法テラスが弁護士を紹介してくれることがある
注意:法テラスの利用には収入・資産要件があります。事前に条件を確認してください。
6-3. 弁護士への相談の進め方と準備リスト
相談時に持参するもの:
- 氏名・住所・家族構成がわかる書類(住民票等)
- 借入一覧(可能なら債権者ごとの明細)
- 預金通帳の写し(直近6〜12か月)
- 就業規則・退職手当規程(なければ会社に照会した履歴)
- 給与明細(直近12か月)
- 不動産や車の証明書類
相談の進め方:
- 状況を正直に話す(支出や生活状況も含めて)
- 退職金の有無・金額・支給見込みは正確に伝える
- 弁護士に手数料や見積りを確認する
6-4. 費用の目安と分割・分割支払いのポイント
- 着手金・報酬は事務所で幅があるため複数の事務所で見積もりを取る
- 分割払いに応じる事務所もあるので交渉する
- 法テラスの立替制度が使える場合は活用を検討
6-5. 相談前に抑えるべき法的ポイントの最終チェック
- 退職金規程を必ず確認して文書化する
- 現金化されている場合は資金の使途を説明できるようにする
- 大きな資産移転は控える(手続き上不利になる可能性)
- 弁護士に相談するタイミングは早いほど有利
6-6. 実務で役立つリファレンスと公的情報の紹介(裁判所の窓口、日弁連の情報等)
実務的な情報は裁判所や法テラス、日本弁護士連合会の日常的なガイドラインに基づきます。初期相談はこれらの窓口で情報収集するのが現実的です。
まとめ — 「個人再生 退職金 8分の1」をどう考えるべきか
結論を簡潔にまとめます。
- 退職金は全額保護されるわけではなく、実務上は一部が再生計画で評価される可能性がある(目安として「8分の1」が用いられることがある)。
- 退職金の扱いはケースバイケース。退職金規程の有無、支給時期、基金の存在、裁判所の運用傾向などが影響する。
- 重要なのは「証拠を揃えること」。就業規則、退職手当規程、支給実績、会社からの文書などを用意すると裁判所に対する説得力が上がる。
- 弁護士や法テラスなどの専門家に早めに相談し、申立てのタイミングや再生計画の作成を慎重に進めることが、最良の結果につながる。
筆者から一言:退職金は人生設計の重要な要素です。個人再生で扱う際は「目先の負債整理」と「将来の生活設計」を両方見据えて、専門家と一緒に最良の方法を選んでください。まずは退職金の規程を会社から取り寄せることから始めましょう。疑問があれば、あなたの状況を整理して無料相談窓口に持って行くのがおすすめです。
個人再生 流れ 大阪|申立ての手順・必要書類・費用・期間をわかりやすく解説
参考・出典(この記事の根拠となる法令・裁判例・実務解説)
- 法務省/個人再生に関する解説(行政ガイド・手続きフロー)
- 日本司法支援センター(法テラス)の個人再生・費用立替制度の案内
- 日本弁護士連合会(個人再生に関する実務記事・相談事例)
- 各地の弁護士事務所による退職金の扱いに関する実務解説記事(実務上「8分の1」等の目安を示す解説)
- 裁判所(地方裁判所)での個人民事再生の運用に関する公表資料・判例解説
(※上記出典は、本文中で述べた実務運用や「8分の1」が実際に実務上の目安として扱われていることを示すために参照した公的機関・実務解説です。個々の事案における扱いは裁判所や担当者、個別事情により異なりますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。)