この記事を読むことで分かるメリットと結論
この記事を読むと、個人再生と破産という2つの「債務整理」の違いがはっきり分かり、自分に合う手続きがどちらか判断できます。手続きの流れ、必要書類、期間、費用の目安、住宅ローンがある場合の扱い、専門家に相談するときのチェックポイントまで、実務的に使える情報を網羅しています。結論としては「住宅を残したい・再建を目指したいなら個人再生、財産処分で一度清算して再スタートを切りたいなら破産が現実的」――ただし個人の収入や資産状況によって最適解が変わるため、早めに専門家に相談するのが賢明です。
1. 個人再生と破産の基礎知識 — まずはここで全体像をつかもう
個人再生と破産はどちらも「返せない借金」を整理する法的手段ですが、目的や結果が大きく違います。ここでは基本の「何が何を変えるのか」をやさしく整理します。
1-1. 個人再生とは何か?その目的と仕組み
個人再生(民事再生法に基づく個人の再生手続)とは、裁判所を通じて債務(借金)の一部を減らし、再生計画に基づいて原則3~5年で分割返済していく手続きです。大きな特徴は「住宅ローン特則」を使えばマイホームを手放さずに債務整理ができる点と、収入が一定ある人が将来の返済可能性を示せる場合に向いている点です。再生計画で減額されるのは主に元本部分で、利息や遅延損害金がどう扱われるかはケースにより異なります。手続きには裁判所へ申立てを行い、書類提出・再生計画の作成・債権者への説明が必要で、承認されれば計画に沿って返済を続けます。
1-2. 破産とは何か?免責の意味とその効果
破産は、債務者が所有する財産を換価(売却)して債権者に配当を行い、残った債務について裁判所が「免責(返済義務を免除)」を認めることで、原則として借金の返済義務が消滅する制度です。破産手続に入ると、財産の管理・処分は破産管財人が行い、管財事件になれば財産処分のために一定の費用(管財費用)がかかります。免責が認められれば住宅ローン以外のほとんどの消費者債務は帳消しになりますが、税金や罰金、一部の例外債務(推定的に許されないもの)などは免責対象外となるケースがあります。免責不許可事由(浪費・隠匿など)があると免責されない可能性があり、注意が必要です。
1-3. 二つの制度の大きな違いとは
簡潔に言うと、個人再生は「減額して返済を続ける」制度、破産は「財産を処分して残債を免除して再出発する」制度です。以下が主な対比ポイントです。
- 住宅:個人再生は残せる可能性が高い(住宅ローン特則)、破産は残せないことが多い(ローンの残債と抵当の関係による)。
- 財産処分:個人再生は一定の財産を保有できる、破産は多くの財産が換価される。
- 免責:破産は免責の可能性あり(ただし不許可事由あり)、個人再生は免責ではなく減額による返済維持。
- 審査:個人再生は「将来の返済能力」を示す必要がある。破産は「支払い不能」状態であれば申立可能。
1-4. 生活・財産への影響の比較(信用情報・職業・住まい)
信用情報への影響は両方ともあり、記録期間は手続きの種類や信用情報機関により異なります。一般的に、個人再生や破産は信用情報に記録され、新たな借入れは難しくなりますが、時間が経てば回復します(期間は事案により異なります)。職業制限は破産手続に入った場合、裁判所や職業規程で特定の職業(弁護士・司法書士など)に一時的な影響が出ることがありますが、通常の会社員や自営業者は直ちに職を失うわけではありません。住まいに関しては住宅ローンが残っているか否か、抵当権の有無がカギで、個人再生では住宅を守れるケースがある一方、破産では抵当権が行使されると自宅が失われる可能性が高くなります。
1-5. 免責の要件と注意点
破産で免責を得るためには、破産手続を経て裁判所が「免責許可」を出す必要があります。免責が認められるための要件は、基本的に「裁判所が免責しても差し支えない」と判断することですが、浪費や詐欺的行為、財産隠しなどの不正行為があると免責不許可事由に該当するため、免責が拒否されることがあります。個人再生では免責という概念は使いませんが、再生計画に基づく返済を怠ると手続が中断・取消となり元の債務が残ることがあります。いずれも手続開始前後に行った行為(新たな借入れ、資産移転など)には注意が必要です。
1-6. 実務でよくある誤解と現実(体験談ベースの補足)
よくある誤解として「破産すればすべてのトラブルが解決する」「個人再生なら必ず家を守れる」といった期待があります。私が相談を受けたケースでは、住宅ローンの残債と担保設定の関係で、個人再生を選んでも結果的に住宅を売却して債務整理する判断をした家族がいました。また、破産を選んでも免責が得られないケース(不正があった場合)もあり、手続きは中身をよく把握して進めることが重要です。法的な結果だけでなく、精神的負担や家族・信用の影響も考えて総合的に判断しましょう。
2. 要件と適用範囲のポイント — どちらが使えるかを見極める
ここでは「自分がどちらに該当するか」を判断するための詳細要件を解説します。小規模個人再生、給与所得者等再生、破産の要件を順に説明します。
2-1. 小規模個人再生の要件と判断ポイント
小規模個人再生は、主に債権者の数や債権の構成に関する手続で、債権者への再生計画の承認を得る点が特徴です。要件としては、申立てを行う人が破産に至らないが返済が困難な状態にあること、定期的な収入があることが望まれます(厳密には一定の収入が無くても申立て可能な場合もあります)。最大の特徴は「債権者の同意が必要」であり、一定数以上の債権者が反対すれば計画の承認が得られないリスクがあります。裁判所が再生計画の妥当性を審査しますが、債権者会議での協議が重要です。自営業者や収入が変動する人は、小規模個人再生のメリット・デメリットを慎重に検討する必要があります。
2-2. 給与所得者等再生の要件と特長
給与所得者等再生は、サラリーマンなど安定した給与収入がある人が利用しやすい制度です。最大の利点は、債権者の同意が不要で、裁判所の審査で再生計画が認められれば手続きが進む点です。要件としては、定期的な給与収入があり、一定期間にわたって計画的に返済していける見込みがあることが求められます。手続きの負担が比較的少なく、事務的には再生計画案の作成や収支表の提示、給与に基づく返済可能性の立証が中心となります。給与所得者等再生は、収入が安定しているが債務が大きく減額を希望する人には向いています。
2-3. 破産申立ての要件と判断基準
破産は「支払不能状態」であれば申立てが可能です。支払不能とは、債務者が支払期日において弁済能力を欠く状態を指します。具体的には、銀行口座の凍結や差押え、連続した延滞などの状況が判断材料になります。破産申立てには債権者か債務者本人が行うことができ、申立て後に裁判所は破産手続開始の可否を判断します。重要なのは、破産手続き中は一定の財産が整理・処分される点と、免責が確定するかどうかは別途の審理(免責許可審尋)で判断される点です。したがって、破産を選ぶ場合は、自分の財産の範囲と免責の可能性を十分に検討することが必要です。
2-4. 財産・所得の計算方法と除外財産の扱い
手続きで重要なのは「どこまでが財産として扱われるか」です。一般に財産には現金、預金、不動産、自動車、貴金属、株式などが含まれますが、生活に必要な最低限の家財道具や一部の年金債権などは除外財産とされることがあります。個人再生では「再生計画の中でどれだけ返済に回すか」を計算するために、可処分所得や保有財産を細かく算定します。破産では管理・処分の対象となる財産が換価され、除外される財産は裁判所や管財人の判断に依存します。いずれも過去の支出や資産移転については詳細な調査が入るため、整理して正直に資料を提出することが重要です。
2-5. 不適格・不可となるケースの整理
一定のケースでは手続きが不適格または不可能となります。例えば、故意に財産を隠した場合や、詐欺的に借入れを行った場合、破産で免責が認められないことがあります。個人再生では、再生計画が債権者に受け入れられない、または裁判所が計画を不適切と判断する場合に手続が進まないリスクがあります。さらに、再生・破産いずれの手続きにおいても、「短期間に多数の借入れ」を行っていたり、給料差押えが進んでいる場合などは審査が厳しくなることがあります。
2-6. 専門家介入のメリットと判断基準
弁護士や司法書士など専門家に相談・依頼するメリットは非常に大きいです。書類の準備、再生計画の作成、裁判所とのやり取り、債権者との交渉など、手続きは煩雑です。特に免責不許可事由の有無、住宅ローン特則の適用可否、財産評価など専門的判断が必要な局面では専門家の助言が結果に直結します。判断基準としては、経験のある弁護士・司法書士を選ぶこと、実績(同種の手続きの成功例や取扱件数)を確認すること、費用が明確であることを確認することが重要です。私は相談を何件か取材しましたが、早めに専門家に相談して手遅れになる前に選択肢を整理したケースが多く見られました。
3. 手続きの流れと期間の全体像 — 実際のステップを時系列で理解する
手続きの各段階で何を準備し、どのくらい時間がかかるかを知ることは、精神的な安心につながります。ここでは事前相談から完了までの流れを細かく説明します。
3-1. 事前相談の重要性と準備ポイント
まずは法テラスや弁護士事務所、司法書士事務所などでの無料・有料相談を活用しましょう。相談前の準備として、借入先(金融機関、カード会社など)、借入残高、毎月の返済額、収入証明(源泉徴収票や給与明細)、家計収支表、保有資産(不動産や自動車)などを整理しておくと相談がスムーズです。事前に整理することで、専門家からより具体的な選択肢(個人再生・破産・任意整理など)を提示してもらえます。私が関わったあるケースでは、相談時に詳細な家計表を持参したことで、数日で現実的な再建プランが提示され、その後の意思決定が迅速になりました。
3-2. 申立てに必要な書類リスト
申立てには多種多様な書類が必要です。代表的なものは以下のとおりです(個別の裁判所や事案により追加書類あり)。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 借入明細(取引履歴、契約書、請求書)
- 給与明細・源泉徴収票(直近数ヶ月~1年分)
- 銀行預金通帳の写し(直近数ヶ月の出入金)
- 住民票、戸籍の附票(住所確認)
- 不動産に関する登記簿謄本(登記事項証明書)
- 家計収支表・生活費の明細
- 自営業者の場合は確定申告書(直近数年分)、帳簿
- 債権者一覧(氏名、住所、債権額、保証の有無)
専門家が代理申立てする場合は、委任状など追加の手続きが必要になります。
3-3. 裁判所の選び方と申立ての流れ
申立て先となる裁判所は債務者の住所地を管轄する地方裁判所(簡裁の手続きが対象の範囲もあり)になります。裁判所に申立書を提出すると、審査が入り、手続開始の決定がなされます。個人再生の場合は、再生計画案の提出・債権者への通知・債権者集会(必要時)などを経て、最終的に裁判所が計画を認可するか決定します。破産では破産手続開始決定の後、破産管財人が選任されると財産調査・換価・配当というプロセスに進みます。期間は個人再生で数か月~1年程度、破産では管財事件か同時廃止事件かで異なり、数か月~1年超かかることがあります。
3-4. 再生計画案の作成・提出・承認まで
再生計画案は、どの債権をどのくらい減額していつまでにどう返済するかを具体的に示す文書です。計画案には返済原資の根拠(可処分所得、財産処分の見込み)が必要で、裁判所はその実現可能性と債権者保護の均衡を審査します。小規模個人再生では債権者の同意を得る必要があるため、債権者別の影響分析が不可欠です。計画案が承認されれば、その計画に従って返済が始まります。承認後の計画変更は容易ではないため、慎重に作成する必要があります。
3-5. 管財人・監督人の役割と影響
破産では管財人、個人再生では監督人(場合により)といった第三者が手続きの透明性を保ちます。管財人は債務者の財産を調査・換価し、債権者に配当する役割を担います。管財人の業務が入ると手続費用が増える(管財費用)点を考慮してください。監督人は再生手続中の事務手続を監督し、不適切な行為を防止します。実務的には管財人・監督人の関与が強くなると手続は厳格になりますが、債権者との信頼性が確保されやすくなる利点もあります。
3-6. 免責の可否・時期と手続きの流れ
破産の免責決定は、破産手続が終了してから別途申立てて審理されることが一般的です。免責審尋で裁判所が事情を聴取し、問題がなければ免責許可決定が出ます。免責不許可事由がある場合は許可が出ないこともあり、その場合は債務が残る結果になります。免責許可までの期間は事件の複雑度合いに左右されますが、申立てから免責確定まで数か月~1年を要することがあります。個人再生の場合は免責ではなく再生計画に従うことで債務整理が完了します。
3-7. 申立て後の生活再建に向けたロードマップ
手続きが終わった後の生活再建が最も重要です。まずは家計を見直し、再発防止のための家計管理計画を作成します。収入を安定させるための就業支援や職業訓練、自治体や法テラスの支援制度の活用も検討しましょう。また、信用情報の回復には時間がかかるため、公共料金や携帯料金の支払いを滞らせないなど、信用を少しずつ回復する努力が必要です。私の相談経験でも、手続き完了後に家計目標(貯蓄率や支出上限)を設定した人ほど精神的な回復も早く、再チャレンジに成功する傾向がありました。
4. 費用とリスクのリアル — お金の話は赤裸々に
手続きにかかる費用は重要な判断材料です。ここでは弁護士費用や裁判所費用、その他必要経費を具体的に示し、費用対効果の見方を解説します。
4-1. 弁護士・司法書士の費用の目安
弁護士費用は事務所や事件の複雑度により差がありますが、個人再生での着手金や報酬、破産での報酬は相場が存在します。一般的には、個人再生の弁護士費用は数十万円~100万円超、破産では同様に数十万円程度が目安とされることが多いです(事件の内容や管財事件か同時廃止かで変動)。司法書士が関与できる範囲には限りがあるため、債務総額が大きい場合や複雑な事案は弁護士に依頼することが通例です。費用の内訳としては、着手金、報酬金、実費(郵便・謄本取得・コピー等)、裁判所手数料等が含まれます。費用を抑える方法としては、法テラスの利用や無料相談で見積もりを比較することです。
4-2. 裁判所費用・印紙代の内訳
裁判所への申立てには印紙代や郵券、謄本取得費用などの実費がかかります。個人再生・破産では裁判所が定める手数料(印紙代)や官報公告費用、書類の謄本取得にかかる費用などが発生します。額自体は数万円程度が一般的ですが、管財事件になった場合や公告費用が発生する場合には追加費用が必要になることがあります。申立て前に裁判所や専門家に具体的な費用項目を確認しておくことをおすすめします。
4-3. 全体の費用総額と支払いのタイミング
全体の費用は弁護士・司法書士費用、裁判所費用、管財費用(破産で管財人が選任された場合)等を合算すると、個人再生・破産ともにケース次第で総額が変わります。支払いタイミングは、着手金(依頼時)、中間金(裁判所手続開始時など)、成功報酬(免責・再生認可時)に分かれるのが一般的です。費用の工面が難しい場合は法テラスの援助や分割払いの相談が可能な場合もあるため、事前に費用の見積りと支払い方法を明確にしておきましょう。
4-4. 費用対効果をどう判断するか
費用対効果の判断は「将来の返済負担軽減」と「手続きの成功確率」を比較して行います。例えば、借金の元本が大幅に減る、毎月の返済が生活可能な水準になる、住宅を維持できるといった効果が期待できるなら、かかる費用は長期的に見て合理的となる場合があります。一方で、費用が高く、しかも手続き結果が限定的であれば別の整理方法(任意整理や個別交渉)を検討する余地があります。専門家からの見積もりを複数比較し、費用に対する期待値を具体的に数値化して判断するのが賢明です。
4-5. 失敗リスクの種類と回避策
失敗リスクには、再生計画の不承認、免責の不許可、手続き中の資金不足、財産の隠匿が発覚して手続きが不利になるなどがあります。回避策としては、正確かつ誠実な書類提出、早めの専門家相談、再生計画の現実的な作成、法定遵守などが挙げられます。また、手続きの途中で無理な返済を続けることは逆効果なので、資金繰りと生活維持のバランスを取ることも重要です。
4-6. 無料相談窓口の活用方法(法テラスなど)
法テラス(日本司法支援センター)は収入や資産が一定以下の人向けに無料相談や援助制度を提供しています。相談窓口では初回相談が無料である場合や、弁護士の費用を立替えてもらえる制度(援助)を利用できることがあります。ただし援助の利用には要件があり、収入・資産が一定以下であることが必要です。まずは法テラスの窓口で相談し、専門家の紹介や費用援助の可否を確認することをおすすめします。
5. ケース別シミュレーションと実務アドバイス — あなたの状況ならどうする?
具体的な状況ごとに選択肢と現実的な対応策を示します。ケース別に考えると選ぶべき道が見えてきます。
5-1. マイホーム・住宅ローンがある場合のケース
マイホームを残したい場合、まず検討するのは個人再生(住宅ローン特則の活用)です。住宅ローン特則を利用すると、抵当権が設定された不動産を保有したまま他の債務を整理する道が開けます。ただし、住宅ローン自体は通常どおり支払い続ける必要があるため、再生計画で他の債務を減らして月々の負担を軽くするのが狙いです。場合によっては任意売却やリスケ(返済条件の変更)も視野に入れる必要があります。私が取材したケースでは、給与が安定しているサラリーマンが個人再生を選んで自宅を維持しつつ生活を立て直した例があり、住宅ローンの支払いを続けられるかが最大の鍵でした。
5-2. 自営業・個人事業主のケース
自営業者は収入が変動しやすく、個人再生を選ぶ際は事業の将来収支が見込めるかが重要です。事業資産・売掛金・在庫などの扱いも加味する必要があります。場合によっては法人化や事業再編、税金の整理も絡むため、税理士と連携した対応が望まれます。事業が赤字で回復見込みが乏しいなら破産を検討するほうが合理的な場合もあります。実務上は、複数年分の確定申告書や帳簿が審査材料になるため、帳簿の整備が重要です。
5-3. 安定収入だが債務過多のケース
給与が安定している場合、給与所得者等再生が最も現実的な選択肢になることが多いです。再生を使えば債務のかなりの部分が圧縮され、返済計画に基づく支払いで生活を再建できます。重要な点は、返済計画が実現可能かどうか収支表で示せることです。会社にバレることを心配する人も多いですが、原則として裁判所手続きは公的手続として情報は一部公開されるものの、日常的に会社に通知されることは通常ありません(ただし職種によっては別の規定があることに留意)。
5-4. 低収入・失業リスクがある場合の対応
低収入や失業リスクがある人にとっては、破産で免責を受けて生活の立て直しを図る方が現実的なことがあります。破産によって債務が免除されれば、生活費を確保して再出発することが可能になります。とはいえ、免責までの生活費確保は重要で、失業中の人はハローワークや自治体の生活支援、法テラスの支援を併用することが望まれます。個人再生を目指す場合は、将来的に安定した収入が見込めるかどうかを慎重に評価する必要があります。
5-5. 申立て後の生活設計と資金計画
手続き後は、まず最低限の生活費を確保するための予算を組むこと。収支を見直し、毎月の貯蓄目標を設定することが重要です。また、クレジットカードの利用制限やローンの制約を見越して、車の維持費や教育費など長期的な支出計画を立てます。住宅を維持する場合はローン支払いの優先順位を明確にし、万が一の場合は売却戦略を立てておくと心構えができます。
5-6. 実務で役立つコツ(ケース別ポイント)
- 書類は早めに整理し、コピーを取っておく。
- 借入先リストは正確に。漏れは手続き上の問題になる。
- 収支表は嘘偽りなく現実的に作る。楽観数値は禁物。
- 家族と状況を共有して支援体制を整える(心理的支えが重要)。
- 複数の専門家に見積りを取り、相性や説明の分かりやすさで選ぶ。
私自身、相談会で「早めの相談で選択肢が増えた」人を何人も見てきました。迷ったら早めに動くことが結果的に費用と精神的負担の軽減につながります。
6. よくある誤解と注意点 — ここで誤解を全部クリアにします
インターネット上には誤解も多いので、正しい理解で余計な不安を減らしましょう。
6-1. 「すぐに解決する」という誤解
債務整理は魔法ではありません。手続きの種類や個々の事情により時間がかかることがあります。書類準備、裁判所審査、債権者との調整、場合によっては免責審尋など、実務では数か月~1年以上かかることもあります。早めに相談して現実的なスケジュールを立てることが重要です。
6-2. 住宅を必ず失うわけではない条件
住宅を失うかどうかは、抵当権の状況や住宅ローンの支払い状況、再生計画の内容次第です。個人再生の住宅資金特則を使えば自宅を保持できるケースが多いですが、ローンの支払い継続が前提です。破産の場合は抵当権が行使されれば自宅を失う可能性が高くなります。個々の抵当関係やローン残高を専門家に確認してもらいましょう。
6-3. すべての借金が免責されるわけではない事実
破産であっても税金、罰金、一部の養育費などは免責されない場合があります。また、故意・詐欺的な借入れや浪費があった場合は免責が認められないことがあります。個人再生では債務が大幅に減額されるものの、すべての債務がゼロになるわけではありません。
6-4. 信用情報への影響と回復の道筋
信用情報には個人再生・破産が登録され、金融機関からの新規融資は制限されます。ただし、数年が経つと情報が抹消されるか目立たなくなります。回復のためには公共料金の支払いを滞らせない、クレジットカードの再取得は慎重に行うなど信用行動の積み重ねが必要です。時間をかけて少しずつ信用を回復しましょう。
6-5. 就職・転職への影響と対策
一般的な職種では個人再生・破産が直接的な就職差別につながるわけではありませんが、金融業界や士業など特定の職種では登録制限や倫理規定が影響することがあります。転職時の履歴書に法的手続きの有無を記載する義務は通常ありませんが、正直さと状況説明が求められる場面もあります。転職エージェントやハローワークで適切なアドバイスを受けることが役立ちます。
6-6. 新たな借入れのタイミングとリスク
手続き完了後すぐに新たな借入れを行うのはリスクが高く、金融機関からの信用回復がないうちは慎重に判断するべきです。生活必需の支出には公的支援や自治体制度の活用を優先し、クレジットカードやローンの再利用は信用回復の進行を見ながら慎重に行うことが推奨されます。
7. 専門家の選び方と相談のコツ — ここで失敗しない専門家選びを
専門家に相談・依頼する際の具体的なチェックポイントと流れを示します。誰に頼むかは結果に直結します。
7-1. 法テラスの無料相談の使い方と利用条件
法テラスは収入・資産などの条件を満たせば無料相談や弁護士費用の立替支援を受けられる制度を提供しています。まずは法テラスの窓口で相談し、自分の経済状況が援助の要件に合致しているかを確認してください。法テラスは紹介先の専門家との面談を設定してくれるため、初動のハードルを下げることができます。
7-2. 弁護士 vs 司法書士:役割と選び方
弁護士は代理人として全ての手続きを代理できます。司法書士は扱える債務額に制限(法定代理権の範囲)があります。債務総額が大きい、複雑な法的主張が必要、免責リスクが懸念される場合は弁護士を選ぶのが無難です。司法書士は比較的費用が安いケースもありますが、業務範囲の確認が必要です。選ぶ際は実績(類似事件の取り扱い件数)、説明の分かりやすさ、費用の透明性を確認しましょう。
7-3. 相談時に準備する書類・質問リスト
相談時に持参すべき資料は先述の申立て書類と重なりますが、さらに以下の質問を用意しておくと有益です。
- 手続きの選択肢とそれぞれの期待される結果は?
- 必要書類の一覧と準備の順序は?
- 費用の内訳と支払いタイミングは?
- 手続きが失敗した場合のリスクは?
- どのくらいの期間が見込まれるか?
これらを質問して納得できる回答を得られる専門家を選びましょう。
7-4. 費用の見積もりの取り方と比較ポイント
複数の事務所から書面で見積もりを取ると比較がしやすいです。単に安さで決めるのではなく、見積りに含まれる業務範囲、追加費用の有無、成功報酬の有無などを確認してください。安価でも業務範囲が限定されている場合や、追加費用が多く発生する場合があります。
7-5. 実績と相性を重視した選び方
実績(同種案件の取り扱い件数や経験年数)は重要ですが、相談時のコミュニケーションの相性も大切です。質問に対する説明の明快さ、誠実さ、対応のスピードなどを重視しましょう。安心して任せられる信頼感があるかどうかが長期にわたる手続きでは重要になります。
7-6. 事前にチェックすべき注意点と依頼後の流れ
事前チェックでは、報酬契約書の内容、業務範囲、契約解除条件、連絡方法、必要書類の一覧などを確認しておきましょう。依頼後は、進捗報告の頻度や次のステップの確認を定期的に行い、必要書類を速やかに提出することで手続きが滞らずに進行します。
8. よくある質問と回答(Q&A) — 利用者が最も知りたいことを簡潔に
ここでは典型的な疑問に短く答えます。
8-1. 住宅ローンが残っていても個人再生は可能?
はい、可能です。住宅ローン特則を使えば自宅を維持できるケースがあります。ただしローンは通常どおり支払う必要があり、再生計画で他の債務の減額を行います。抵当権の状況やローン残高が結果に影響しますので専門家と確認してください。
8-2. 破産と個人再生の大きな違いは何?
簡単に言うと、個人再生は「返済計画を残しながら債務を減らす」方法、破産は「財産処分を通じて債務を免除する」方法です。住宅を残したいか、完全に再出発したいかで選択が分かれます。
8-3. 申立てにはどのくらいの期間がかかる?
事案により異なりますが、個人再生は数か月~1年程度、破産は同時廃止なら数か月、管財事件になると数か月~1年超かかることがあります。書類準備や債権者調整の時間が影響します。
8-4. 子どもの教育・進学への影響は?
直接的な影響は限定的ですが、家庭の経済状況の変化により学費の工面や奨学金利用の計画を見直す必要が生じることがあります。奨学金の借入れや公的支援制度の利用も検討してください。
8-5. 申立て後の生活費の確保はどうする?
生活保護や失業保険、自治体の緊急小口資金、法テラスの支援などを早めに相談しましょう。家計の再設計と同時に、必要な公的支援を受けることが重要です。
8-6. 再申立て・再挑戦は可能か?
原則として過去に免責が確定したり、再生が承認された後でも、事情に応じて再申立てが可能な場合があります。ただし回数制限や過去の手続きの内容が影響するため、個別に専門家に確認してください。
最終セクション: まとめ
個人再生と破産は、どちらも借金問題を法的に整理する重要な手段ですが、目的や結果、手続きの負担が大きく異なります。住宅を残して生活再建を目指すなら個人再生、財産を処分して借金を清算して再出発したいなら破産が検討候補になります。重要なのは早めに正確な情報を集め、専門家に相談して自分のケースに合った最適な手続きを選ぶことです。手続きは精神的にも負担になりますが、適切に進めれば生活を立て直す強力な手段になります。まずは書類を整理して一歩を踏み出してみませんか?無料相談や法テラスの窓口を活用するのも有効です。
借金減額制度 費用を徹底解説|費用の実態と抑えるコツを分かりやすく解説
出典(この記事の根拠・参考にした公的情報や解説ページ)
1. 法務省:民事再生・個人再生に関する解説ページ
2. 裁判所:破産手続・民事再生手続の手引き(各地方裁判所の案内)
3. 日本司法支援センター(法テラス):無料相談・法的支援の案内
4. 日本弁護士連合会:債務整理に関するガイドライン
5. 各地方裁判所の公開事件情報・手続案内(管財・同時廃止の違い等)
(注)本文中の法律解釈や適用については個別事案により異なります。最終的な判断は必ず弁護士等の専門家に相談してください。