個人再生 取締役の実務ガイド:影響・手続き・会社リスクと対策をわかりやすく解説

個人再生で失敗しないために※必読ガイド-債務整理の前に-

個人再生 取締役の実務ガイド:影響・手続き・会社リスクと対策をわかりやすく解説

債務整理弁護士写真

この記事を読むことで分かるメリットと結論

結論を先に言うと、取締役が個人再生を行っても「必ず会社が倒産する」わけではありません。しかし、会社に及ぼす影響(取引先の信用低下、銀行対応、株主の反応、役員の解任リスク)は具体的に発生し得ます。この記事を読むと、取締役が個人再生を検討するときに押さえるべき法律的ポイント、実務的対応、手続きの流れ、準備すべき書類、銀行や取引先への説明の仕方、ケース別の具体的な対処法まで、実務目線+経験を交えてわかりやすく理解できます。まずは今回の最優先事項を示すと――「早めに専門家(弁護士)に相談し、会社に対する説明計画を作る」ことです。これでリスクをかなり抑えられます。



1. 個人再生と取締役の関係の基礎 — まずここを押さえよう

取締役が個人的な債務整理(個人再生)を検討するとき、法律上と実務上で分けて考える必要があります。法律上は「個人再生」は個人の債務整理制度であり、会社の倒産手続きや会社法の直接手続ではありません。つまり原則として「個人の負債は個人で整理」するものです。一方で、実務上は取締役という立場があるため、会社経営や信用に影響が出やすく、場合によっては株主や取引先からの信頼問題や解任リスクにつながります。

具体的に言うと、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生(サラリーマン向け)」などの類型があり、減額の仕組みや債権者の扱い方が異なります。取締役として確認すべきは、①連帯保証している借入(会社の借入に対する個人保証)と②役員報酬や会社資金の流れがどう見えるか、です。たとえば、取締役個人が会社の借入の連帯保証人である場合、その保証債務を個人再生で整理すると、会社側の借入条件・担保設定や返済スケジュールに直接影響することがあります。

ここで大事なのは「善管注意義務」の視点。取締役は会社法上、会社のために善良な管理者としての注意を払う義務があります(実務では「善管注意義務」と呼ばれます)。個人再生が会社の継続にとって重大な影響を及ぼす可能性があるときは、どのように株主や取引先に説明し、事後対応(取締役の留任・辞任・解任)をどう進めるかを具体的に検討する必要があります。多くの場合、取締役個人が早めに専門家と相談し、会社に事実を適切に伝え、再建計画の整合性を示すことが信頼回復につながります。

(私見・体験)これまで取材した中小企業の事例では、事前に金融機関と非公式に相談し、返済猶予や条件変更を得てから個人再生に踏み切ったケースがうまくいっていました。逆に何も説明せずに手続きを進めてしまい、銀行が一斉に融資枠を見直した例もあります。早めの情報整理が鍵です。

1-1. 取締役と個人の法的立場の区別

取締役の地位は会社法に基づく法人の機関としての役割で、個人再生は民事再生法(個人向けの制度)によって規律される個人手続です。法律的には別々の問題ですが、役員が個人として再生をすると、会社との契約(とくに個人保証)や株主の信任といった面で接点が生じます。したがって「法律上の区別」を理解したうえで、現実の経営関係を洗い出すことが最初のステップです。具体的には会社借入に対する個人保証の有無、会社資金の私的流用がないか、会社の決算や資産状況がどうかを確認しましょう。

1-2. 個人再生の基本機構と「普通再生/小規模再生/給与所得者等再生」の違い

個人再生は債務を大幅に圧縮し、原則3~5年で分割返済する制度です。大きく分けると「小規模個人再生」(債権者の合意が得られない場合でも裁判所の認可で)と「給与所得者等再生」(給与のある事業者やサラリーマン向けで支払能力に応じた計画)に分かれます。小規模では、債権者の同意を得るプロセスや再生計画の可決要件が異なり、給与所得者等は安定収入の継続性が前提になりやすい特徴があります。取締役は、自分の収入形態(役員報酬や事業所得)を踏まえ、どの類型が適合するかを専門家と判断する必要があります。

1-3. 取締役が個人再生を申請する際の主な留意点

主な留意点は以下のとおりです:
- 会社借入に対する個人保証の扱い(保証債務の存否と保全)
- 役員としての職務継続が会社にとって適切か(株主・従業員の安心感)
- 信用情報への記載と取引先・金融機関の反応
- 資産隠しや不正出金と見なされないよう適切な資産開示
これらは手続きの初期段階で整理しておくと、裁判所・債権者対応がスムーズになります。

1-4. 会社法上の影響:善管注意義務・責任の拡大/縮小の可能性

取締役は善良な管理者としての注意を払う義務があり、個人の債務整理が会社の利益を損ねる恐れがある場合、会社や株主から説明責任を求められることがあります。たとえば、個人的債務が会社の業績に直結するケース(個人保証の破綻で会社の借入条件が変更される等)では、取締役としての職務執行に問題がなかったかが問われることがあります。ここで重要なのは「事実の開示」と「対応策」を示すことです。

1-5. 連帯保証・保証人との関係性と整理の順序

連帯保証がある場合、保証債務は個人再生の対象になりますが、会社側の借入の返済力も問題になります。順序としては、①個人の債務全体を把握、②会社の借入と個人保証の関係を明確化、③金融機関等と交渉して会社側の影響を最小化するプランを作る、という流れが現実的です。保証債務を個人再生で扱う場合、保証対象となる会社の債務者代位や担保の取り扱いに注意が必要です。

1-6. 実務的な用語解説(民事再生法の要点、再生計画案、債権者集会のイメージ)

- 再生計画案:債務をどの程度・どの期間で返すかを示す計画書。裁判所と債権者の承認が必要。
- 債権者集会:債権者が再生計画案を審議・採決する場。小規模個人再生では債権者の同意が重要。
- 監督委員・管理型手続:事案に応じて裁判所が選任する役職が関与する場合がある。
これらの用語は手続き理解の基礎なので、弁護士と計画書のドラフトを作りながら一つずつ確認しましょう。

2. 取締役が個人再生を選ぶメリットとデメリット — 判断材料を整理する

ここでは取締役として個人再生を選ぶメリット・デメリットを具体的に整理します。会社経営者・取締役はプライベートの負債が会社経営に波及する可能性が常にあります。どの選択肢が会社と本人にとって最適かを判断するためには、法的側面だけでなく「信用・取引・人的影響」も含めて総合的に評価することが重要です。

2-1. メリット:生活と事業の再建を両立させる可能性

個人再生は破産に比べて財産の保全がしやすく、住宅ローン特則を使えば住宅を残しつつ債務調整が可能です(条件あり)。取締役にとっての最大のメリットは、経営の継続と個人生活の立て直しを同時に図れる点です。給与所得者等再生を利用すれば、役員報酬が安定している場合に返済計画を立てやすく、社会復帰も比較的スムーズです。会社にとっても、経営者本人が適切な計画を示すことで安定を保てる可能性があります。

2-2. デメリット:職務継続のリスクと手続きの制限

デメリットは、信用情報機関への記録(いわゆる「事故情報」)による取引制限、取締役としての信頼低下、金融機関からの融資条件変更や取引先からの取引縮小が起きる点です。また、株主や他の役員が問題視すれば解任のリスクもあります。手続き中は裁判所や債権者の監視が入るため、経営判断の自由度が一時的に低下することもあります。

2-3. 取締役地位の取り扱いと、留任/解任の現実的影響

取締役が個人再生しても、自動的に役職喪失になるわけではありません。ただし、株主総会での信任や取締役会での合意が課題になる場合があり、会社の信用維持を優先させるため自ら辞任するケースもあります。会社側は、株主や主要取引先への説明文を用意し、必要に応じて代替体制を整えることが実務的に求められます。

2-4. 取引先・信用情報(信用情報機関の影響と復旧の道筋)

個人再生の記録は信用情報機関(たとえばCIC等)に一定期間残ります。これが原因でカード発行や新規借入、リース契約に制限がかかることがあります。しかし、信用回復のプロセスは「計画を守ること」と「取引履歴の改善」を継続することで進みます。会社に対しては、取引先に誠実に説明し、代替保証や担保、決算公開などの措置で信用を補うことが有効です。

2-5. 事業継続の観点からみた再生計画の整合性

取締役本⼈の返済計画が会社の資金繰りに悪影響を与えないことを示す必要があります。具体的には、個人の再生計画と会社のキャッシュフローがぶつからないように調整し、金融機関には再生計画のコピーや資金繰り資料を示して理解を得るとよいでしょう。外部監査や第三者の保証を用意するケースもあります。

2-6. 債務整理の他の選択肢との比較(任意整理・破産との違い)

- 任意整理:裁判所を通さず債権者と直接交渉する方法。裁判所手続きに比べ柔軟だが、住宅ローンなどの大口債務は整理しにくい。
- 破産:財産を処分して債務を免除してもらう手続き。重い影響が出る一方、根本的に債務を清算できる。
- 個人再生:債務を圧縮しつつ財産を残せる可能性。取締役としては会社との関係を保ちながら個人の立て直しを図りたい場合に有効。
選択はケースバイケースなので、専門家と費用・将来設計を含めて検討してください。

3. 手続きの流れと準備 — やるべきことを時系列で示す

個人再生に向けた実務的な流れと準備事項を、取締役としての視点を込めて整理します。ここでのポイントは「情報の整理」と「関係者への説明準備」です。裁判所手続き自体は形式に沿った書類作成と審理ですが、取締役の場合は会社への影響を最小化するための並行作業(銀行交渉、株主対応など)が重要です。

3-1. 事前チェックリスト:財務状況・資産・負債の整理

申立て前に最低限確認する項目:
- 個人の債務一覧(消費者ローン、カード、税金、保証債務含む)
- 会社に対する個人保証の有無と内容
- 直近の所得証明(源泉徴収票、確定申告書)
- 保有資産(不動産、車、預貯金、投資)
- 会社の決算書(貸借対照表、損益計算書)や資金繰り表
これらを整理して弁護士に相談すると、より正確な手続き準備ができます。

3-2. 必要書類の準備(直近の決算書・所得証明・資産目録・債権者リスト等)

主な必要書類は以下です:
- 直近数年分の源泉徴収票、確定申告書(事業所得がある場合)
- 住民票、戸籍(裁判所の要求により)
- 債権者一覧、借入残高証明書、ローン契約書
- 不動産の登記事項証明書、車検証(資産の確認)
- 会社関係では直近の決算書、資金繰り表、会社の借入契約書(個人保証の有無確認)
裁判所に提出する書類は正確であることが求められるので、コピーと原本の整理が必要です。

3-3. 弁護士・司法書士の選び方と依頼のポイント

個人再生手続は裁判所での審理や再生計画の作成が必要なため、原則として弁護士に依頼することが一般的です(司法書士は扱える範囲に限界があります)。選び方ポイント:
- 個人再生の実績(取扱件数、裁判所での可決率)
- 取締役/経営者案件の経験(会社対応や銀行交渉の経験があるか)
- 料金体系の明確さ(着手金・報酬・実費)
- 初回相談での対応の丁寧さと実務的な助言の有無
依頼後は、弁護士とともに会社向けの説明資料や銀行交渉プランを作成するのが安心です。

3-4. 申立ての流れ(どの裁判所、提出書類、審理の流れ)

申立て先は原則として本人の住所地を管轄する地方裁判所です。全体の流れは概ね以下です:
1. 事前相談・必要書類の収集
2. 申立書類の作成と提出(裁判所への申立)
3. 裁判所による審査・債権者への通知
4. 再生計画案の作成・提出
5. 債権者集会(必要な場合)と裁判所の認可
6. 認可後の返済開始(計画通り)
手続期間は事案によって異なりますが、一般的には数ヶ月~1年程度を見込むことが多いです。会社関係の調整(銀行対応等)は並行して進めます。

3-5. 申立後のスケジュール感と中間報告の要点

申立後は裁判所からの照会や債権者からの問い合わせが来ることがあります。重要なのは「嘘なく、かつ適切に資料を揃え続けること」。中間報告では、収入の変動や重要資産の処分があれば速やかに報告し、計画の信頼性を保ちます。会社側にも必要に応じて中間状況を報告し、誤解や不安を放置しないことが大切です。

3-6. 小規模個人再生と給与所得者等再生の違いと適用条件

小規模個人再生は事業者や自営業者で債権者構成が複雑な場合に向き、給与所得者等再生は給与所得者や安定的な収入がある役員向けに適しています。給与所得者等再生は返済能力が給与に密着するため、役員報酬の安定性が重要になります。どちらが適合するかは収入形態、債権者の種類、会社保証の有無などを踏まえて判断します。

4. 会社への影響と法的リスク — 実務的にどう対処するか

ここでは具体的に会社に与え得る影響と、それに対する実務的な対応策を解説します。取締役が個人再生をする際に会社としてやるべきことは「情報管理」「ステークホルダーへの説明」「金融機関との協議」です。適切に対応すれば大きな混乱は避けられるケースが多いです。

4-1. 善管注意義務の観点からみた取締役の職務執行

取締役は会社の利益を最優先に考える義務があります。個人再生を行う場合、この義務と個人の債務整理は時に衝突します。実務上は、取締役が私的債務の整理を進める際に「会社資金を流用していないか」「会社に不利益を生じさせていないか」を明確にすることが必要です。場合によっては第三者監査や税理士・公認会計士による資金検査を行い、透明性を示すとよいでしょう。

4-2. 債権者・株主・取引先との関係性の整理と周知

重要取引先や大株主には事前に誠実に事情説明を行い、影響がどの程度かを説明して理解を得る努力をすることが実務的に有効です。説明資料には再生手続の概要、想定される会社への影響、会社側の対策(代替保証や資金繰りの補強案)を示すことが望ましいです。放置すると噂が広がり信用毀損につながるため、迅速な周知をお勧めします。

4-3. 取引銀行・融資契約への影響(実務上の注意点と対応例:みずほ銀行・三井住友銀行などの実務動向)

金融機関は信用リスクに敏感です。取締役が個人保証をしている場合、銀行が保証力を懸念して融資条件を見直すことがあります。実務上は、主要取引銀行(例:みずほ銀行、三井住友銀行など)には事前に相談し、返済計画や担保の見直しについて協議するのが現実的です。交渉で猶予や条件変更が得られることもありますし、銀行側が早めに代替策(第三者保証、担保強化)を求めるケースもあります。重要なのは、まず情報を隠さずに協議に臨むことです。

4-4. 取締役地位の変化(株主総会・役員会での対応・解任リスク)

会社法上、取締役の解任は株主総会で決議できます。個人再生が原因で株主や主要取引先が不信感を抱けば解任の論点になることがあります。実務では、解任リスクを下げるために「代替案(後継人材、業務執行の分担、信頼回復計画)」を示すことが有効です。また、事前に主要株主と個別相談しておくことも解任リスク抑制に寄与します。

4-5. 会社の財務健全性と再生計画との整合性

個人の返済計画が会社の資金繰りと矛盾しないかを確認します。たとえば、取締役個人への給付(役員報酬)を一時的に減らす、社外取締役を充実させてガバナンスを強化する、などの方策が考えられます。会社の借入については、個人保証が外せるかどうかを銀行と交渉することが現実的な対応策です。

4-6. 実務上の留意点と公的機関の関与(法テラス・裁判所手続きの実務)

法テラスなどの公的支援機関は、手続き相談や弁護士費用の援助(要件あり)などの情報提供が受けられます。裁判所手続きは所定の書類と審理が必要なため、弁護士と連携して進めるのが基本です。会社側も法テラス等を活用して、従業員への影響や雇用維持に関する支援情報を得ることができます。

(実務ノート)銀行交渉で「取引停止」まで至ることは稀ですが、条件の厳格化(保証人交代、担保追加)が一般的です。銀行も損失を最小化する方向で動くので、早めの説明で対応の幅が広がります。

5. ケーススタディとよくある質問 — 実例で理解する具体対応

ここでは実務でよくあるケースを取り上げ、それぞれの注意点と対応策を提示します。取締役の状況は多様なので、類似事例を参考に自社ケースに落とし込んで検討してください。

5-1. 中小企業の取締役が個人再生を選択したケース

ケース例:従業員20名の製造業取締役Aさん(個人借入1,200万円)が個人再生を申請。Aさんは会社の主たる対外保証人ではあったが、会社本体の資金繰りは独立していた。対応:弁護士と協力して保証債務の範囲を明確化、主要取引銀行と事前協議して融資条件の維持を取り付け、取締役会で代替体制を説明。結果的に経営を続行し、従業員雇用を維持できた例があります。

5-2. 連帯保証人がいる場合の対応と影響

個人再生で保証債務が整理されると、債権者側は会社に対して担保取立や経営改善を促すことがあります。対応策は以下:
- 会社側で返済能力を示すキャッシュフロー表を用意
- 第三者保証や担保の追加提案
- 大株主や主要取引先への事前説明
これにより、銀行や取引先の理解を得られる可能性が高まります。

5-3. 後継者候補の取締役が関与するケースの留意点

後継者候補が個人再生を行う場合、事業承継計画への影響が懸念材料となります。留意点は、承継予定の株式や経営権に直接的な差し支えがないか、承継時の資金調達に制限が出ないかを検討すること。場合によっては承継前に個人再生の手続を完了させる等の選択肢もあります。

5-4. 海外資産を持つケースの考慮事項

海外に資産がある場合、個人再生での扱いは国際的な資産評価や現地法の関係で複雑になります。国外の不動産や預金は手続き上も影響を受けるため、国内外の弁護士・税理士と連携して評価・申告を行うことが重要です。無断で資産を移動させると手続き上の問題になるので注意してください。

5-5. 申立ての費用感・期間の目安

費用は弁護士費用、裁判所手数料、必要書類の取得実費などがかかります。弁護士費用の目安は事務所によりますが、着手金+報酬で合計30万~100万円程度が一般的と言われます(案件による)。期間は案件の複雑さで差がありますが、申立てから再生計画の認可までは数ヶ月~1年程度を見込むのが現実的です。正確な費用・期間は専門家に相談してください。

5-6. よくある質問と回答のまとめ(短縮Q&A)

Q: 個人再生すると取締役を続けられますか?
A: 自動的に資格を失うわけではありませんが、株主や取引先の信頼問題が生じる可能性があり、対応が必要です。

Q: 会社の借入はどうなりますか?
A: 会社の借入は原則として会社の責任ですが、取締役が個人保証している場合は保証関係の見直しが必要です。

Q: 社員に知らせるべきですか?
A: 会社運営に影響がある場合は、誠実に説明すると風評被害を防げます。法的義務はケースによります。

(コメント)実務上、正しい順序で情報を整理し、金融機関と早めに協議することが最も成果を左右します。隠すより先に相談する、これが鉄則です。

6. 実務的チェックリストと結論 — 何を優先すべきか

最後に、取締役が個人再生を考えるときの実務チェックリストと、失敗を避けるポイント、事後のフォローについてまとめます。ここが「行動計画」の部分です。

6-1. 申立て前の最終確認リスト

- 個人の債務一覧を最新化(借入先、残高、利率、保証有無)
- 会社の借入契約書・決算書を用意(担当税理士と共有)
- 主要取引先・銀行の特定と優先的な説明リスト作成
- 弁護士の選定・初回相談の実施
- 家族や配偶者への説明と生活防衛策の検討

6-2. 申立て時の注意点と失敗を避けるポイント

- 資産隠しや虚偽申告は重大な不利益と法的問題を招きます。正直に資料を提出すること。
- 会社資金と個人資金の区分を明確にしておく。
- 主要銀行との協議は書面で残し、合意事項は速やかに文書化。
- 弁護士と密に連携し、裁判所からの照会には迅速に対応する。

6-3. 事後のフォローアップ(信用回復・取引先対応の基本)

- 再生計画の履行を着実に行う(計画通りの返済実績が信用回復の第一歩)。
- 決算の透明化や第三者役員の導入でガバナンスを強化し、取引先に安心材料を提供する。
- 必要に応じて信用保証協会や商工会議所等の支援を活用する。

6-4. 取引先への周知と説明のコツ

- 先に主要取引先と面談で事情を説明(文章でも併用)。
- 影響範囲(直接の債務保証の有無、取引継続の可否)を明確に示す。
- 代替案(担保、別保証人、支払いスケジュール)を用意すると説得力が増す。

6-5. ケース別のテンプレート・サンプル(通知文、覚書、説明資料の雛形)

以下は説明文の要点サンプル(実際に使うときは専門家にチェックを):
- 件名:役員個人の債務整理に関するご報告と当社業務への影響について
- 本文に含めるべき項目:事実関係(簡潔)、想定影響(会社借入や取引継続の可否)、会社の対策(代替責任体制、担保補強等)、連絡先(窓口)
テンプレートは状況に応じて調整してください。

6-6. まとめと今後の行動計画(何を優先するべきか、次の一手)

優先順位は次の通りです:
1. 弁護士に相談して現状整理(債務総額・保証関係の把握)
2. 会社の主要金融機関に事前相談(影響の有無確認)
3. 主要株主・取引先へ誠実な説明(タイミングと文面を弁護士と確認)
4. 裁判所手続きの申立てと同時に会社側の信頼回復プランの実行
この順に動くことで、想定されるリスクを最小化できます。

(締めの言葉)取締役が個人再生を検討すると、心理的にも負担が大きいですが、正しい手順で進めれば会社と個人の両方を守ることは可能です。早めに専門家に相談し、透明性を保ちながらステークホルダーに誠実に対応してください。困ったときは一人で悩まず、プロに頼ることを強くおすすめします。

参考出典(この記事で用いた主な情報源・確認先)
1. 民事再生法(法令全文) — e-Gov(法務省)
借金減額 家のローンで家計を守る方法|任意売却・リファイナンス・返済猶予まで手順と実践ガイド
2. 会社法(会社法の条文と解説) — e-Gov(法務省)
3. 東京地方裁判所・民事再生手続の案内(裁判所公式)
4. 日本弁護士連合会(債務整理・破産・個人再生に関する解説ページ)
5. 法テラス(総合法律支援センター)の手続き案内と支援制度説明
6. CIC(株式会社シー・アイ・シー)等、信用情報機関の情報開示に関する説明資料
7. 全国銀行協会ならびに各行(みずほ銀行、三井住友銀行等)の法人・融資関連窓口案内(公開されているガイドライン等)
8. 裁判所・法務省・法曹関係の実務解説(各種法律事務所の公開FAQ、手続きガイド)

(注)本文中の実務的助言や費用・期間の目安は一般的な事例に基づくもので、具体的な事案は個別の事情で異なります。必ず弁護士等専門家に個別相談してください。

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