個人再生 陳述書 書き方ガイド|例文つきで失敗しない作成法を丁寧解説

個人再生で失敗しないために※必読ガイド-債務整理の前に-

個人再生 陳述書 書き方ガイド|例文つきで失敗しない作成法を丁寧解説

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この記事を読むことで分かるメリットと結論

この記事を読むと、個人再生で裁判所に提出する「陳述書」がどんな文書か、何を書くべきか、どの順番でどう表現すれば説得力が出るかがわかります。
具体的なテンプレと例文を使って、すぐに書き始められるレベルまで落とし込みます。
さらに、添付書類の整理方法や虚偽記載を避けるチェックリスト、専門家に頼むべきタイミングも解説します。

結論を先に言うと、陳述書は「事実関係の整理」と「再生計画の実現可能性の説明」を両立させることが肝。数字と証拠を揃え、読み手(裁判官)に「この人は再建できる」と納得させる書き方を目指しましょう。



1. 個人再生 陳述書の基礎と全体像 — まずは「何のための書類か」をはっきりさせよう

個人再生における陳述書は、裁判所にあなたの事情(収入・資産・債務・生活状況)を詳しく説明し、提出する再生計画の裏付けを行う文書です。単なる感情的な訴えではなく、事実と数字を並べた「説明資料」です。ここをしっかり作ると、裁判所や債権者に対して再生計画の現実性を示しやすくなります。

陳述書の目的と法的位置づけ
- 目的:個人の生活実態・債務発生の経緯・再生計画の実現可能性を裁判所に説明すること。裁判所はこれを基に計画の可否を判断します。
- 法的位置づけ:陳述書自体は裁判所に提出する陳述資料の一つで、証拠資料や再生計画書と合わせて審理されます。陳述書に記載された事実は、添付する証拠(給与明細、通帳、契約書、見積書、診療明細等)で裏付ける必要があります。

どの場面で提出するか
- 申立て時に同封する場合、計画案提出時、または審理中に追加説明として提出する場合があります。特に計画の「減額理由」「返済可能性」の説明は重要で、多くの裁判所・審理で強く問われます。

よくある誤解と正しい理解
- 誤解:陳述書は長ければ良い → 実際は要点を押さえ、客観的証拠で裏付けることが重要です。
- 誤解:感情的な事情だけで減額が認められる → 裁判所は客観性と再建可能性を重視します。

実例ポイント
- 「失業して減収になった」だけでなく、失業期間・失業前後の収支比較、雇用保険等の受給状況を示すことで説得力が増します。
- 医療費が多い場合は、医療明細・通院履歴・将来の見込み(医師の証明書)を添付すると良いです。

私の体験(一言)
弁護士事務所で債務整理の資料整理を手伝った際、陳述書に「いつ・どの契約で」債務が発生したかを時系列で整理したところ、裁判官の質問が非常に短く済み、審理がスムーズに進んだケースを見ました。ポイントは「時系列」と「数字」です。

1-2. 申立て全体の流れ — 陳述書はどのタイミングで何を補強する?

個人再生の申立ては大きく分けて「準備→申立て→審理→計画認可(または却下)」という流れになります。陳述書は準備段階で作成し、申立書や再生計画案に添付して提出するのが一般的です。申立てに先立ち、以下の主要書類を揃えます:申立書(再生手続開始の申立て)、再生計画案、債権者一覧、収入・支出明細、預貯金通帳の写し、源泉徴収票や確定申告書など収入証明、その他資産証明(登記簿謄本や車検証)です。陳述書はこれらの「背景説明」と「事実裏付け」をする役割を担います。

裁判所の審理で重視されるポイント
- 数字の整合性:収入・支出・債務総額が一致しているか。
- 再建可能性:計画案で提示した返済を現実的に行えるか。
- 重要事実の裏付け:失業、病気、事業不振などの事情は証拠で裏付けること。

添付書類の取り扱い
- 原則として原本は提出しませんが、裁判所から原本の提示を求められる場合があります。一般的には写しを提出し、必要時に原本を提示できるよう整理しておきます。ファイル名、日付、ページ番号を統一しておくと、審理での突き合わせが楽になります。

申立て後の一般的なスケジュール感
- 申立て後、裁判所で書類審査が行われ、必要に応じて呼出しや面談が設定されます。実務上、申立てから計画認可まで数か月かかることが多く、ケースにより半年以上かかることもあります。

1-3. 重要な用語をやさしく解説 — 「債権者」「減額」「清算価値」って何?

法律用語は最初に整理しておくと楽です。ここでは陳述書作成で頻出する用語を平易に説明します。

- 債権者:あなたにお金を貸している側。銀行、消費者金融、カード会社、個人貸付など。陳述書では債権者ごとの債務残高と返済状況を書きます。
- 減額:債務総額を一定水準まで減らすこと。個人再生では裁判所が再生計画を認可すると、債権者への弁済額が調整されます。
- 清算価値(清算価値保障原則):もし破産した場合に債権者が得られる金額と比較して、再生案の弁済総額がそれ以上でなければならないという考え方。陳述書では、再生案が破産よりも有利であることを示す必要があります。
- 小規模個人再生と給与所得者等再生:小規模個人再生は債権者の同意方式が中心で、給与所得者等再生は給与所得者向けの手続きで原則として同意は不要(ただし条件あり)。どちらを選ぶかで陳述書の書き方や重視点が変わります。

年収・手取り・生活費の算出基準
- 年収は源泉徴収票や確定申告書で確認し、手取りは税金・社会保険料を差し引いた実際に手元に残る金額を示します。生活費は家賃・水道光熱費・食費・通信費・教育費・医療費などを実際の領収書等で示すと説得力が増します。

用語ごとの記載時の注意点
- 用語を使う際は初出時に簡単な定義を添付し、以降は同じ用語を使い続けることで読み手の混乱を避けます。

1-4. 記載ミスのリスクと修正手順 — 「間違えたらどうする?」に備える

陳述書での誤記・不整合は審理での不信を招き、最悪の場合、計画認可に悪影響を与えることがあります。ここでは典型的ミスとその対応法を示します。

虚偽記載を避けるためのチェックリスト
- 数字は原本で確認したか(通帳、源泉徴収票、領収書)。
- 日付や契約先名は正確か(証拠と一致しているか)。
- 債務の残高や遅延の有無は債権者の取引履歴と照合したか。
- 特殊事情(病気、離職、事故など)は証拠で裏付けられるか。

誤記・不整合を見つけるコツ
- 声に出して全文を読む(読み飛ばしの発見)。
- 第三者(家族・同居者・専門家)にチェックしてもらう。
- 数字だけを抜き出して一覧にし、合計が一致するか確認する。

修正申立ての手続きと期限感
- 提出後に誤りを発見した場合は、速やかに訂正書を作成して裁判所に提出します。重要な事実の誤記は放置すると不利益になるため、発覚次第速やかに対応することが肝要です。裁判所は修正を受け入れることが多いですが、修正の理由が疑わしいと審理で厳しく問われます。

取り返しのつかない事態を避けるポイント
- 虚偽(意図的な隠蔽や偽造)は刑事責任や再生計画の否認につながる可能性があります。事実は正直に、でも説明は理路整然と。

1-5. 陳述書と再生計画案の関係 — 「説明」と「数値」を一致させる

陳述書は再生計画案に肉付けをする補助資料です。計画案で提示した返済額・期間が、陳述書の収入・支出・資産状況と整合していることが重要です。

計画案の実現可能性を示すための記載コツ
- 返済原資(どの収入からどれだけ支払うか)を明確に示す。給与からの天引きなのか、事業収入からの繰入れなのかを分ける。
- 収支表(月次・年次)を作成し、余剰金がどれだけ見込めるかを数値で示す。
- 予備費や突発支出(医療費等)をどう処理するかを記述する。

生活再建の具体性を高める表現
- 収入を増やす計画(転職見込み、副業の予定)や支出削減の具体策(家賃削減、車の売却等)を立て、達成時期と見込み金額を添える。
- 特に事業者は将来の売上見込み、契約先の確度、経費削減の方法を記載します。

事実関係と数値の整合性を保つ方法
- 各項目に参照資料(添付資料番号)を振る。例えば「収入:2024年分の確定申告書(別紙1)」のようにリンクさせます。
- 同じ数値は文中と表の両方に出す際、必ず一致させる。

審理をスムーズに進めるための留意点
- 裁判所は限られた情報で判断します。冗長な説明を避け、要点と証拠を結び付けて順序立てて記載することが有効です。

1-6. 実務における提出書類の整合性 — 書類管理は説得力を左右する

実務で重要なのは、書類の見た目の整合性と裏付けの取りやすさです。陳述書は「説明文書」ですが、添付書類が瞬時に参照できる体裁にしておくと審理で高評価です。

ファイル名・日付・署名の統一ルール
- ファイル名の付け方例:2024_申立者名_源泉徴収票.pdf のように、何が入っているかわかる命名にします。
- 日付表記は統一(例:2024年4月1日)し、署名欄は必ず原本に署名(電子提出の場合は所定の電子署名に従う)します。

電子提出と紙提出の違いとポイント
- 裁判所の電子案件受付が可能な場合は電子提出の方が手続きが早い一方、原本提示を求められることがあるため原本は手元に保存しておきます。
- 紙提出ではクリアファイルやページ番号で整理し、添付資料リストを先頭に置くと見やすくなります。

実務で役立つチェックリストの作成方法
- 「提出帳票リスト」を作成し、番号付けして陳述書に該当番号を記載する。例:「別紙1:源泉徴収票(1枚)、別紙2:通帳コピー(10ページ)」など。

保存期間と原本管理
- 提出後も原本は手元に保管し、裁判所からの照会等に迅速に対応できるようにしておきます。

2. 陳述書に記載すべき具体項目と書き方のコツ — 実務的チェックリスト

ここからは「何をどう書くか」を項目別に詳しく見ていきます。各項目は裁判所や債権者が最も注目する部分なので、丁寧な裏付けが必須です。

2-1. 基本情報の書き方 — 最初に間違えないためのポイント

陳述書冒頭には当事者情報を明記します。ここでのミスは致命的なので慎重に。

必須記載事項
- 氏名(戸籍上の表記)、住所、職業(会社名・業種)、生年月日、連絡先(電話番号、メールアドレス)。
- 申立人と同居者や扶養の有無(配偶者・子ども)も明示します。家族構成は生活費算定に直結します。

代理人がいる場合
- 弁護士・司法書士が代理人の場合は、その氏名・事務所名・連絡先を明示します。代理人不在の場合は自署と押印を行います。

事実関係の整理前後の時系列
- 重要事実は時系列で並べるのが分かりやすい。例えば「2019年4月:ローン契約、2021年10月:失業、2022年3月:借入の延滞発生」のように、原因と結果が追えるようにします。

署名・押印・日付
- 提出日付と自署(直筆署名)を忘れずに。代理人がいる場合は代理人の署名方法に従います。

用語統一のコツ
- 「月収」「手取り」「収入」などは定義を最初に行い、以後はその定義を使い続ける。例えば「月収=税引前の給与」と定義しておくと混乱が少なくなります。

2-2. 収入と資産の開示方法 — 数字は信頼の源

収入と資産の開示は裁判官にとって最重視ポイントの一つ。嘘や曖昧な表現は絶対に避け、証拠と結びつけて示します。

収入の開示(給与・事業・副収入)
- 給与所得者:直近2~3年分の源泉徴収票、直近の給与明細(3か月~6か月分)、雇用契約書(あれば)を添付。月収・年間収入・手取りの算出過程を明記。
- 自営業・フリーランス:直近2~3年分の確定申告書(青色申告決算書等)、売上・経費の内訳、主要取引先と契約書の写し。事業継続の見込みを示すため、過去の収入推移と今後の受注予定を説明します。
- 副収入:アルバイト、家賃収入、配当金などは領収書や契約書で裏付け。

資産の開示(預貯金・不動産・車両・動産)
- 預貯金:直近の通帳コピーまたは残高証明。
- 不動産:登記事項証明書、固定資産税評価証明書、賃貸収入があれば賃貸契約書。
- 車両:車検証、売却見積書(売却予定がある場合)。
- その他高額な資産(美術品、投資口等):評価書や売却可能性の説明。

生活費や固定費の具体的数字
- 家賃・光熱費・通信費・食費・保険料・教育費・医療費を月次で算出し、領収書や請求書で裏付ける。特に扶養家族がいる場合は教育費や被扶養者の医療費を詳細に記載。

収入源が複数ある場合の整理
- 各収入の性格(安定性・変動性)を記述。例えば「定期的な賃貸収入(月額10万円、稼働率90%)」「年2回のボーナス」など、収入の波を明確に示します。

資産の評価時の注意点
- 自己評価(「売れば50万円」)だけでなく、第三者の査定や市場価格の根拠(不動産の公示価格、車の買取査定)を添付すると信頼性が高まります。

2-3. 借金の内訳と債権者別の明細 — 債務は隠さず正確に

債務一覧は債権者ごとに整理し、残高、利率、残存期間、担保の有無、延滞の有無を明示します。これが再生案のベースになります。

債務の総額と債権者ごとの内訳
- 表形式で記載するのが読みやすい:債権者名、最終借入日、残高、担保・無担保、遅延の有無、連絡先。各債権者に対する最終支払履歴(取引履歴)を添付します。

返済状況(遅延・延滞)と担保の有無
- 担保がある債務(住宅ローン等)は優先権が異なるため、扱い方が変わります。住宅ローンを除いて債務を整理する場合、その説明を明確にします。

取引履歴の添付方法
- 取引履歴は提出先に照会することもできますが、可能な限り自身で取り寄せた明細を添付しておくと信用性が高まります。

減額の理由と結びつく事実
- 「何故減額が必要なのか」を債務発生の経緯、収入変化、支出増加の事実と結びつけて説明します。単なる“返せない”ではなく“返済能力が著しく低下している”という説明が必要です。

将来の返済見通しと現実性
- 再生計画に基づく月々の弁済額が、実際の生活の中でどの程度無理のない額かを示す。家族構成・住宅費・医療費などを踏まえ、返済後の最低限の生活水準を数値で示します。

2-4. 生活状況の説明と減額理由の結びつけ方 — 「なぜ今減額が必要か」を納得させる

裁判所は単に「収入が減った」と言われても動きません。減額が必要な理由を生活実態と絡めて具体的に示すことが重要です。

生活費の実態・家計の縮小計画
- 現在の月次収支を示し、どこをどれだけ削減したかを数値で示す(例:飲食費を月3万円→2万円、車両維持費の削減で月2万円確保等)。削減策に関する証拠(解約手続きの証明、売却見積)も添付すると良いです。

収入減少・支出増加の事情を時系列で説明
- 例えば「2022年3月:会社都合退職、2022年6月:パート就業で収入が▲40%」のように、いつ何が起きたかを明確にします。

子ども・扶養・医療費など特殊事情
- 扶養家族の数、学費、入院や通院の頻度・将来見込みを具体的に記載。医療費が原因の場合は医師の診断書や医療費明細を添付。

減額を正当化する法的根拠との結びつけ
- 単に感情的な説明で終わらせず、再生法の趣旨(生活再建のための手続)とあなたの場合の適合性を示します。例:「この計画は清算価値より高く、破産よりも債権者の利益が確保される」など、簡潔に論点をまとめる。

将来の生活再建の見通しを具体的に描く
- 転職見込み、資格取得予定、副業計画、家計見直し等の実行計画を提示し、達成時期と期待される増収額を示します。

2-5. 将来の返済計画と現実性 — 数字で納得させる

再生計画の要は「返済期間」「月々の弁済額」「収支とのバランス」。ここでの記載が甘いと計画自体の認可は難しくなります。

再生計画案の基本的要件
- 返済期間(通常は3年が基本、事情により延長が認められる場合があります)、弁済総額、優先順位(担保付債務、地位の扱い等)を明示します。計画期間と金額が現実に見合っているか、陳述書で裏付ける必要があります。

返済の優先順位と資金の安定性
- 生活費を確保しつつ返済できる資金を示す。給与天引きでの返済や、事業における固定収入からの捻出など、安定性のある原資を明示します。

事業継続の有無がある場合の影響
- 事業を続ける場合は収入の波や固定費の負担を説明し、売上回復の根拠(受注残、見積もり、既存顧客との契約)を添付します。

生活費の圧縮と収入回復の見込み
- 具体的節約案(家賃を下げる、車を手放す等)と、実行した場合の改善額を試算して示します。

計画の現実性を裏付ける資料
- 決算書、給与明細、雇用契約書、売却見積書、医師の診断書など、計画を支える証拠は多いほど安心感を与えます。

2-6. 添付資料の使い方 — 「どの資料を、どの位置で添付するか」

添付資料は陳述書の「筋肉」。本文で主張したことをすぐに裏付けられるように整理します。

収入証明・資産証明・支出証拠の整理方法
- 附属資料は章ごとに番号を振り、本文中で参照する(例:「収入については別紙1参照」)。裁判所・債権者が瞬時に参照できる体裁に整えると評価されます。

書類の枚数・ファイル名の管理
- 大量の書類がある場合は目次を作り、各資料の簡単な説明(何を示すための資料か)を付ける。ファイル名は「申立人名_別紙1_源泉徴収票.pdf」のように分かりやすく。

コピーと原本の取り扱い
- 基本は写しを提出し、原本は手元保管。ただし、裁判所が原本提示を求めることがあるため、原本はすぐに提示できる状態にしておく。

提出前の写真・スキャン品質のポイント
- スキャンは300dpi以上、文字が鮮明に読めること。切れや傾きがあると信用性が損なわれます。

電子データと紙媒体の両方での準備フロー
- 電子提出を行う場合でも、紙の原本を保管しておく。電子ファイル名は日付と内容を明記し、バックアップを複数所持すること。

3. 実践編:陳述書のテンプレと例文 — そのまま使えるサンプルを多数掲載

ここでは実際に使えるテンプレートと例文を示します。すべての例は読みやすさと証拠との結びつきを重視して作っています。ご自身の事情に合わせて数字や事実を入れ替えてください。

3-1. 基本テンプレートの構成 — 読ませる陳述書の型

陳述書の基本構成(見出し順):
1. 表紙(事件番号・提出先・申立人名・提出日)
2. 目次(添付資料リストを含む)
3. 当事者の基本情報
4. 事実関係(時系列で)
5. 収入・資産の状況(証拠参照)
6. 債務の内訳(債権者別一覧)
7. 減額理由(生活状況、特記事項)
8. 再生計画の実現可能性(収支表・計画表)
9. 結語(要点まとめと宣誓文)
10. 添付資料一覧(別紙)

章立てごとの見出しの付け方
- 各章に短いサマリー行をつける(例:「第4章:事実関係 — 雇用喪失から現在までの経緯」)と、読み手の理解が早まります。

読みやすさを高める段落の作り方
- 1段落は原則3~4行で切り、数字は表で示す。証拠は章末に集めて番号で参照することで本文の流れがスムーズになります。

3-2. 事実関係の書き方の例 — 時系列で「原因→結果→現在」を示す

事実関係はできるだけ客観的に、時系列で書きます。以下は抜粋例です(これはサンプルであり、数値は仮)。

(例文抜粋)
「私は2018年4月に株式会社X(従業員数200名)に入社し、月給28万円(税引前)で就業していました。2021年9月、親会社の業績悪化により配置転換と賃金カット(▲15%)があり、以降年収が減少しました。2022年6月に担当業務が縮小され、残業時間も減少したため、年間手取り収入は2019年の約420万円から2022年には約300万円に減少しました(証拠:別紙1 源泉徴収票、別紙2 給与明細)。」

誤解を招かない表現と客観性の担保
- 「減収した」とだけ書くのではなく、何%減ったのか、金額で示し、証拠を付けましょう。通帳の入出金履歴や給与明細で補強します。

金額の表記統一と換算のルール
- 金額表記は「円」で統一、千円未満の端数は切り捨てか四捨五入かを明示。過去の通貨単位や複数年に渡る金額は年換算で示すと比較がしやすくなります。

3-3. 減額理由の説明例 — 心情ではなく「数字と計画」で語る

減額理由は感情的な訴えよりも、事実→影響→対策の順で説明します。

(例文抜粋)
「生活費の増加:子どもの教育費が増大し、学費として年間約80万円を支出しています(別紙5 学費領収書)。また、私自身が慢性疾患により通院を要しており、月平均の医療費は3万円に達します(別紙6 医療領収書)。これにより可処分所得が著しく減少し、現行の債務を維持することが困難になりました。再生計画では、生活費を維持しつつ月々5万円を債権弁済に充てることで、5年での弁済完了を見込みます。根拠は、現在の収入見込みと節約計画(別紙7)に基づきます。」

反論リスクを避ける表現の工夫
- 「可能性が高い」「見込み」などの言葉の使い方に注意し、根拠資料を示すことで「単なる期待」ではないことを示します。

3-4. 生活再建計画の作成例 — 月次収支の実例サンプル

以下は月次収支の例(サンプル、単位:円):

- 月収(手取り):250,000
- 家賃:80,000
- 光熱費:15,000
- 食費:40,000
- 通信費:10,000
- 保険料:12,000
- 教育費:30,000
- 医療費:3,000
- その他(移動費等):10,000
- 合計支出:200,000
- 月間余剰:50,000 → これを債権弁済に充当

支出の優先順位と節約の具体策
- 家賃交渉で▲10,000、通信プラン見直しで▲3,000、保険の見直しで▲4,000など、具体的な数値と実行時期を示すと説得力がある。

売却・処分・資産活用の方針
- 不要車両を売却して一時金を確保する、預金の一定額を弁済原資にする等、短期で改善できる項目を列挙します。

事業を続ける場合の再建案
- 受注確度の高い見込み客リスト、経費削減での利益率改善、補助金や助成金の利用予定などを示す。

3-5. 迷いやすいポイントの回避例 — 実務でよく見かける失敗を回避

ここではよくあるミスを例示し、どう書き換えるかを示します。

- NG表現:「収入が減ったので返せません」 → OK表現:「2022年の年間手取りが前年より約28%減少し、現在の収支では月額〇万円の余剰しか確保できないため、現行の返済水準を維持することが困難です(別紙資料)。」
- NG表現:「医療費が高いので特別扱いして欲しい」 → OK表現:「医療費の増加により可処分所得が月▲〇万円減少しており、治療継続のための支出を確保しつつ、月額〇万円の弁済を行う計画です(医師の診断書別紙)。」

専門家の添削を受けるときのポイント
- 添削では「事実の裏付け」「数字の整合性」「読みやすさ」の3点を重点的に見てもらう。変更は修正版の差分を明示して依頼すると効率的です。

3-6. 実際の本文サンプル(抜粋) — 使えるテンプレ例

以下は簡略化した本文サンプル(例文A~D)。実際には数字や証拠の参照を加えてください。

例文A(基本情報と事実関係のみ)
「申立人:山田太郎(1980年1月1日生)…私は2017年より会社員として勤務し、2021年○月に解雇されました。以降の収入と支出は別紙1~3の通りです。」

例文B(減額理由と生活再建結合)
「私の主たる減額理由は、収入減少と扶養負担の増加です。再生計画における月額弁済額は〇万円で、家計改善策と副業見込みにより事業継続後3年で完済可能と見込んでおります。」

例文C(添付資料の説明併記)
「本陳述書における収入証明は別紙1(源泉徴収票)、別紙2(給与明細)を参照してください。債務明細は別紙3に一覧化しています。」

例文D(締め)
「以上のとおり、私は誠実に再建を図り、債務の弁済に努める所存です。何卒ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。」

4. よくある質問と注意点 — 審理で聞かれる疑問に先回りして答える

この章では、陳述書作成でよく寄せられる疑問とその回答、裁判所対応で注意すべき点をQ&A形式で整理します。

4-1. 陳述書の分量・ページ数の目安 — 長ければ良い?短ければダメ?

ケースにより差がありますが、重要なのは「濃度」です。一般的には8~30ページ程度が多く、短いケースでは数ページ、複雑な事案では50ページ超になることもあります。ポイントは以下:

- 必要な情報を過不足なく:無駄に長くせず、要点と証拠を結びつける。
- 章立てで見やすく:目次と添付資料一覧を必ず付ける。
- 裁判所の指示に従う:裁判所からページ数や形式の指定がある場合はそれに従う。

分量が審理に与える影響
- 長すぎると読み飛ばされる恐れ、短すぎると説明不足で追加資料を求められます。読み手の負担を考慮してバランスを取るのがコツです。

4-2. 提出期限と修正のタイミング — 期日は守ろう

提出期限は裁判所通知や手続きの段階で示されます。期限を守ることは信頼につながり、遅延は不利益を招く可能性があります。

提出後の修正や差し替えの手続き
- 小さな修正なら訂正書を提出、大きな後発事実がある場合は補足陳述書を作成して提出します。速やかに裁判所に相談するのが得策です。

期日延期の可能性とその対応
- 特別な事情(病気、災害等)で期日延期を申し立てることができます。証拠(診断書等)を添えて申し立てましょう。

提出前最終チェックリスト(抜粋)
- 氏名・住所の誤りなし、数字の整合性、添付資料の番号付け、署名押印(電子の場合は電子署名)等。

4-3. 虚偽記載のリスクと対処 — 正直が最善です

虚偽記載が発覚すると、計画の信用性が失われ、最悪の場合は刑事責任や民事的ペナルティが生じます。

発覚時の修正手順と法的リスク回避
- 発覚したら速やかに訂正書・補足説明を提出し、経緯を説明する。意図的でない誤りでも説明責任を果たすことが重要です。

誤解を招く表現を避ける具体策
- 曖昧な語(「ほとんど」「大体」)を避け、可能な限り数値と期間を明示する。

事実関係の裏付け資料の重要性
- 書類がなければ照会を受ける可能性が高まるため、可能な限り証拠を揃えておきます。

4-4. 弁護士・司法書士の役割と費用感 — いつ頼むか、どこまで頼むか

専門家への依頼は、書類の精度と審理通過率を高める投資です。ここでは実務上の選び方と費用感を示します。

依頼のメリット・デメリット
- メリット:法的な書式の正確性、証拠の整え方、裁判所対応の代行、交渉力。
- デメリット:費用がかかる(着手金、報酬、実費等)。

費用の目安(地域や事務所によるが一般的な範囲)
- 着手金:数十万円~
- 成功報酬:再生認可後に設定される場合も
- 相談料:初回無料~1万円程度
(※正確な金額は各事務所に確認してください)

費用を抑える工夫
- まずは法テラス等の無料相談を活用し、必要性を見極める。
- 書類作成だけ依頼する、面談回数を絞る等の方法で費用を調整する。

依頼時の質問リスト(例)
- これまでの類似事例の数、成功割合、見積もりの内訳、対応スケジュール、報告の頻度。

4-5. 法的支援機関の活用と窓口 — 無料相談や補助の使い方

法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会・司法書士会は、初期相談や費用補助の案内をしてくれます。費用が心配な方はまずこちらを利用するとよいでしょう。

窓口の使い分け
- 法テラス:収入・資産が一定水準以下の方には給付型の法的支援や弁護士紹介がある場合があります。
- 各地弁護士会:初回無料相談や弁護士検索が利用可能。
- 司法書士会:簡易な手続きや書類作成の相談を受けられる場合があります。

相談時の準備書類
- 通帳コピー、源泉徴収票、確定申告書、債権者一覧、過去の督促状等を持参すると相談がスムーズです。

4-6. 子育て・扶養・医療費等の影響の扱い — 家族がいるケースでの書き方

扶養家族や子育て中の家庭は、生活費や教育費が大きく影響します。これらは裁判所も考慮する重要事項です。

世帯構成や扶養状況が与える影響
- 扶養人数が多い場合、最低生活費が高く評価され、弁済額の可変性に影響します。具体的には子ども一人当たりの教育費などを証拠で示す必要があります。

医療費・教育費の優先度の説明
- 継続治療が必要な医療費は「生存権に関わる支出」として高い優先度を有します。医師の診断書や医療費領収書を添付して具体性を示しましょう。

生活費の変動をどう反映させるか
- 一時的な支出増(受験・入院等)がある場合は時限的な支出として説明し、減額の要因と回復見込みを示すことが重要です。

家族の立場への配慮
- 同居家族の収入や資産、将来支援の可能性なども合わせて記載すると説得力が増します。

5. 専門家に依頼するタイミングと探し方 — 自分で書くか頼むかの判断基準

最後に、専門家を頼むべきか自力で進めるかの判断基準と、良い専門家の探し方をまとめます。

5-1. 自力作成が難しいと感じたときの判断基準

以下の状況に当てはまる場合は専門家への依頼を検討してください。
- 債権者が多数(例えば10社以上)で債務関係が複雑。
- 事業所得があり、決算書の整理が必要。
- 不動産や担保付き債務がある。
- 虚偽が疑われる可能性や税務問題等の法的リスクがある。
- 提出期限が迫っており時間的余裕がない。

自力でできるケースの目安
- 債務が少数で、給与所得のみ、かつ収入・支出の裏付けが揃っている場合はテンプレで十分対応可能です。

5-2. 依頼先の探し方(弁護士・司法書士・認定司法書士)

専門家探しのポイントは「実務経験」「専門分野」「料金体系」の3点です。

検索手順の例
- 各弁護士会・司法書士会の検索機能を使い、「民事再生」「債務整理」で検索。
- 事務所のホームページで担当弁護士の経歴、過去の取り扱い件数、成功事例(匿名化)を確認。
- 初回相談が無料かどうかをチェックし、複数事務所で比較する。

実務経験・得意分野の見極め
- 個人再生・民事再生の実務経験が豊富か、住宅ローン関係の処理経験があるかなどを確認。事業者向け再生の経験があるかも重要です。

口コミ・紹介の活用法
- 知人や同業の紹介は有力な情報源。ただし、必ず複数の意見を確認して偏りを避ける。

5-3. 相談の準備と質問リスト — 相談で得たい回答を明確に

相談時は以下の書類を持参するとスムーズです:通帳コピー、源泉徴収票、確定申告書、債権者一覧、督促状、保険証など。質問リスト例:

- 私の場合、個人再生が適切か?
- 見込み費用と成功報酬の試算は?
- 期間・必要書類・裁判所での手続きの流れは?
- 審理で予想される主な論点は?

相談で得るべき実務的回答
- 依頼時のスケジュール(着手から認可までの目安)、必要な追加資料、裁判所担当部署の傾向など。

5-4. 費用の見積と比較 — コストを合理的に評価する

費用の内訳を明確にして比較することが大切。一般に、弁護士費用は着手金+成功報酬+実費が基本です。見積を複数取って内容(何を含むか)で比較しましょう。

分割払いや着手金交渉のポイント
- 事務所によっては分割払いや減額交渉が可能な場合があります。費用負担が厳しい場合は法テラスを介した支援も検討。

コスト対効果の評価方法
- 期待される弁済額の減少、将来の負担軽減、時間や心理的負担の軽減を総合的に考慮して評価する。

5-5. 信頼できる窓口と実務のつなぎ方 — 相談から受任までの流れ

法テラスや弁護士会の紹介を受け、初回相談で受任するかどうかの判断を行います。受任後は、担当者が書類作成から裁判所対応まで進めます。

地域性を踏まえた探し方
- 東京・大阪など大都市圏では専門家が多く選択肢が豊富。一方、地方では司法書士が先に対応するケースもあります。

実務的な流れ
- 受任後のスケジュール確認、担当者との連絡方法(メール・電話・オンライン)の取り決め、追加資料の提出期限などを明確にしておくとスムーズです。

5-6. 実務的な手続きの流れと注意点(現場の実務から学ぶ)

実務では「書類の提出後にも追加資料を求められる」「審理中の変更に柔軟に対応する」ことが多いです。依頼後も迅速な情報提供と連絡が重要です。

依頼後の連携方法
- 役割分担を明確に:本人は事実確認と証拠提出、事務所は書類作成と裁判所対応。月次で進捗報告を受けることをルール化すると安心です。

書類不備の予防策
- 提出前チェックリストで全項目を確認。コピーが多い場合は目次を作成し、ページ番号で参照できるようにする。

追加資料の求められ方と対応
- 裁判所からの追加照会が来たら、速やかに対応する。対応が遅れると審理が長引いたり、信用性に影響する可能性があります。

よくあるQ&A(追加)

Q. 陳述書は自筆じゃないとダメですか?
A. 原則としてパソコンで作成して問題ありませんが、署名欄は自署(直筆)が求められるケースが多いです。電子提出の場合は裁判所の指示に従ってください。

Q. 陳述書の内容を家族に見られたくないのですが?
A. 陳述書は公的手続きに使用される書類であり、審理によっては情報が債権者に開示されることがあります。プライバシー保護の観点から、必要最小限の情報開示で済むよう事務所と相談してください。

まとめ — 重要ポイントの整理

ここまでで押さえておくべき要点を短く整理します。

- 陳述書は「事実(数字)+再生計画の現実性」を示すための説明書。感情的な訴えよりも、時系列・数値・証拠で説得力を出すこと。
- 書き方のコツ:章立てと目次、添付資料番号、数字の整合性、証拠を結び付けること。
- よくあるミス:曖昧な表現、証拠不足、署名・日付の不一致。提出前のチェックリストで防止する。
- 専門家に頼むタイミング:債務が多数、事業問題、担保付き債務、法的リスクが高い場合は早めに相談を。
- 実務上の鉄則:正直に書く、証拠を揃える、裁判所や債権者に対して誠実に対応する。

私の気付き(一言アドバイス)
自分で陳述書を書いてみると、頭の中で漠然としていた問題が数値化され、「本当に何が問題か」が見えてきます。まずはテンプレートに沿って書いてみて、それを専門家に見せるだけでも相談の質が大きく変わります。

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本記事は一般的な解説です。具体的な法的判断や手続に関しては、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。

出典
- 法テラス(日本司法支援センター)「債務整理(個人再生)の案内」
- 東京地方裁判所・大阪地方裁判所 等の民事再生手続の手引き
- 日本弁護士連合会・各地弁護士会の債務整理ガイド
- 日本司法書士会連合会の相談窓口案内
- 民事再生に関する法令・解説(民事再生法の概要を解説した法務省・裁判所のページ)

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