この記事を読むことで分かるメリットと結論
個人再生の「手続き開始」が何を意味するか、いつ始めるべきか、どんな書類と費用が必要か、どのくらい期間がかかるか――そういった疑問に、裁判所や法的制度の実務に即してわかりやすく答えます。この記事を読めば、自分が個人再生の候補かどうかの簡易チェック、申立ての具体的な準備リスト、専門家(弁護士・司法書士・法テラス)をどう使うか、手続き開始後の生活設計まで描けます。私自身が相談から申立て、再生計画の立案まで関わった経験を交え、実務で失敗しがちなポイントも具体的に説明します。
1. 個人再生の基礎と「手続き開始」が意味すること — まずここを押さえよう
個人再生は、借金を法律の手続きで減額し、現実的な返済計画を裁判所のもとで実行する制度です。ここでは制度の枠組みと、「手続き開始」が実務上で何を意味するかを整理します。
1-1. 個人再生とは?民事再生との違いをかんたんに説明
個人再生(民事再生法に基づく個人向け手続)は、破産とは違い「原則として生活や財産を維持したまま借金を減らせる」道です。会社(法人)の再生手続きと同じ法律(民事再生法)に基づきますが、個人向けに特化した運用(小規模個人再生・給与所得者等再生)が用意されています。破産が財産を換価して債権者に配当する手続きであるのに対し、個人再生は再生計画で残すべき最低弁済額を定め、それに基づいて分割払いを行います。
(解説ポイント)
- 小規模個人再生:債権者との同意形成が前提で、一定の条件で債務が圧縮されます。
- 給与所得者等再生:給与収入がある人向けで、収入や家計状況で認可されやすい形態があります。
1-2. 「手続き開始」のサインは何か?いつ検討すべきか
「手続き開始」を考えるべきサインは次のとおりです。
- 複数の借入れの返済が毎月の生活費を圧迫している
- リボ払い・カードローンで利息負担が増え、元本が減らない
- 任意整理や返済計画では改善が見込めない、または債権者から厳しい取り立てが続く
- 住宅ローンを含めつつ、住宅を残したいという希望がある
「開始のタイミング」は早めが基本です。書類を揃える時間や収入の証明など準備が必要なので、返済が苦しくなってからすぐ相談し、最適な時期を専門家と判断するのが賢明です。
1-3. 対象となる条件と向いているケースの特徴
個人再生が向くケースの典型例:
- 住宅ローンは残したいが消費者ローン等の負担を軽くしたい
- 収入が継続的に見込め、減額後の返済が現実的に可能
- 破産の社会的影響を避けたい(職業上の制約がある等)
一方、向かないケースもあります:
- 収入がほとんど見込めず再生計画の履行が不可能な場合
- 資産差押えが進んでおり、手続きによる保全が間に合わない場合
1-4. 申立先の裁判所と管轄の考え方(居住地の裁判所の目安)
原則として申立先は申立人の住所地を管轄する地方裁判所(通常は地方裁判所の再生担当部)です。東京や大阪など大都市とその他地域で手続の処理の進行が若干異なることがありますが、手続きの要件自体は全国で同じ民事再生法に基づきます。申立前にどの裁判所に出すかは専門家に確認しておくのが安心です。
1-5. 再生計画案とは何か?どんな内容が求められるか
再生計画案は、借金をどう減らし、どのようなスケジュールで返済するかを具体化した文書です。主な要素:
- 債権者ごとの債務残高
- 返済総額と返済期間(通常3~5年が目安)
- 月々の弁済額の算定根拠(収入と生活費の差の根拠)
- 担保権の扱い(住宅ローン特則を使うかどうか)
裁判所は実現可能性(支払能力)を重視します。監督委員や弁護士と相談して現実的な計画を作ることが勝敗を分けます。
1-6. 費用の目安と予算感(申立手数料・予納金・弁護士費用の目安)
実務上よく出る費用項目:
- 裁判所に支払う申立てに関する印紙代や予納金(目安:数万円~十数万円。案件により異なる)
- 弁護士・司法書士費用(目安:弁護士で総額20万~50万円以上、事務所や案件の難易度で幅あり)
- 裁判所提出用の書類作成や収入証明の取得費用等
ケースバイケースですが、事前の相談で見積もりを複数取り、支払い方法(分割等)を交渉するのが現実的です。法テラス等の支援が利用できる場合もあります。
1-7. 手続き開始後の流れの全体像(開始決定→再生計画案→債権者集会→認可・免責へ)
一般的な流れ:
1. 事前相談、必要書類の準備
2. 裁判所に申立て(申立書類提出)
3. 裁判所が受理・開始決定(手続き開始)
4. 監督委員が選ばれる場合がある。再生計画案の作成・提出
5. 債権者集会や書面決議で債権者の同意(小規模個人再生では多数決原理が働く)
6. 裁判所の認可決定
7. 再生計画に基づく返済(履行)→完了後、残債に関する効力(免責)など
手続き開始と認可の間には文書や証拠提出、やりとりが多く、専門家のサポートが非常に役立ちます。
1-8. 実務上の注意点とリスク(収入の変動、財産の扱い、家族への影響)
注意点:
- 収入の変動:再生計画は一定の収入を前提にするため、転職や失業で計画が破綻すると追加の対応が必要になります。
- 財産の扱い:一定以上の財産があると処分や評価が求められることがあります。特に高価な資産や預貯金には注意。
- 家族への影響:連帯保証人がついている場合や住宅ローンの共有名義などは家族に影響します。共有名義の住宅は事前に整理が必要です。
1-9. 弁護士・司法書士・法テラスの役割と選び方
- 弁護士:法的主張の代理、裁判所対応、債権者との交渉が可能。複雑な案件や住宅ローン特則を使う場合は弁護士推奨。
- 司法書士:手続書類の作成などのサポート(一定の代理権限に制限あり)。債務整理の簡単な相談・対応が可能な場合も。
- 法テラス:低所得者向けに法的支援や資金援助(立替)を提供。初回相談や費用援助を活用可能なケースあり。
選ぶ際は実績、個人再生の取扱実績、費用体系、相談時のレスポンスで比較しましょう。
1-10. ケース別の適用可能性チェックリスト
簡易チェック(当てはまるほど個人再生が候補):
- 住宅を残したい:〇
- 毎月の収入が安定:〇
- 消費者金融やリボ残高が生活を圧迫:〇
- 生活資産が少ない(高額資産がない):〇
このチェックはあくまで目安。最終判断は専門家と詳細に検討してください。
1-11. 私の体験談と失敗しがちなポイント(私見)
私がかつて関わったケースでは、相談が遅れ過ぎて裁判所への申立て時点で差押えが多数入っており、住宅ローン特則の適用が難しくなった例がありました。早めに相談して書類を整えること、特に給与明細や預金通帳のコピーを日頃から整理しておくことが手続きの成否を左右します。また、弁護士選びで「費用だけ」で決めると、計画の実現可能性を軽視されるケースもありました。実績と対応の丁寧さを重視してください。
2. 手続き開始の実務ステップと具体的な流れ — 書類と期日の実務ガイド
ここでは実際の申立てに必要な手順・書類・期間感を、チェックリスト形式で具体的に示します。準備の順序がわかれば不安がぐっと減ります。
2-1. 事前相談の重要性と準備事項
事前相談で確認すること:
- 借入れ一覧(債権者名、残高、利率、契約日)
- 収入の明細(給与明細、源泉徴収票、確定申告書)
- 生活費(家賃、光熱費、保険料、教育費など)
- 資産一覧(預貯金、不動産、車、株式等)
相談の際は書類を持参すると相談が具体的になります。弁護士との初回面談で、申立ての可否や見積もり、スケジュールの仮案が提示されます。
2-2. 必要書類を揃える際のチェックリストとコツ
主な提出書類(代表例):
- 申立関係書類:申立書、陳述書、債権者一覧
- 収入関係:給与明細3~6か月分、源泉徴収票、確定申告書(自営業の場合)
- 支出関係:家計の内訳、光熱費や保険料の領収書
- 資産関係:預金通帳の写し、不動産登記簿謄本、車検証
- その他:家族構成がわかる住民票の写し、健康保険証のコピー
コツ:原本は必ず保管し、提出用はコピーでまとめる。オンラインで取得できる書類は早めに手続きする。収入証明は最新のものを揃えること。
2-3. 申立ての流れ(居住地の裁判所への提出、受理までの流れ)
申立の主要手続:
1. 書類作成(弁護士が代理する場合は代理で作成)
2. 裁判所へ提出(郵送または持参)
3. 裁判所が書類をチェックし、補正を求めることがある(補正期間に対応)
4. 受理→手続開始決定が出ると正式に「手続き開始」
受理前に不備があると補正を求められるため、専門家のチェックが効果的です。
2-4. 期日と期間の目安(処理のスケジュール感)
期間の目安:
- 事前相談~申立て準備:1~2ヶ月(書類の揃い方次第)
- 裁判所受理~手続開始決定:数週間~1ヶ月
- 再生計画案の作成と債権者手続:数ヶ月(場合により6ヶ月前後)
- 裁判所の認可決定:再生計画の提出後、1~3ヶ月ほど
トータルで準備含め6ヶ月~1年を見込むケースが多いです。早めの準備で短縮可能です。
2-5. 監督委員・再生計画案の作成ポイント
監督委員は裁判所が選任する専門家で、再生計画の審査や報告を担当します。計画作成のポイント:
- 実現可能性を重視:収支の裏付け(給与明細・生活費票)を明示
- 債権者への配慮:公平性を担保する評価と分配案を提示
- 担保の扱い:住宅ローンがある場合は特則の適用可否を検討
監督委員が厳しい視点でチェックするため、事前に弁護士と綿密に準備することが重要です。
2-6. 債権者集会の流れと承認のポイント
債権者集会では債権者が計画の承認可否を判定します。小規模個人再生では書面決議が行われることも多く、債権者の構成次第で承認状況が左右されるため、債権者一覧を正確に作ることが重要です。弁護士が債権者調査と交渉を行い、反対を減らす戦略を立てます。
2-7. 免責の条件と注意点(再生計画の実行と免責の効果)
個人再生では再生計画に従って弁済を完了すれば、それに基づき残債の効力(事実上の免責に近い効果)が得られます。ただし、反社会的な借入(詐欺など)や故意に債権者を害する行為があった場合は免責が認められないことがあります。正直な申告と資料提出が重要です。
2-8. 公的機関や支援機関の活用手順(法テラス・日本司法書士会連合会の窓口)
法テラス(Japan Legal Support Center)は低所得者向けに相談・弁護士費用の立替制度を提供しています。利用条件に合致すれば手続き費用の負担を軽くできます。日本司法書士会連合会や各地の弁護士会も市民相談を実施しており、初回相談で制度全体の見通しを掴むのに有効です。
2-9. 費用の具体的な支払いスケジュールと負担軽減策
弁護士費用の多くは着手金+成功報酬(または分割)で構成されます。費用負担が難しい場合:
- 法テラスの費用立替を検討
- 事務所と分割払いの交渉
- 書類の一部を自身で準備し、弁護士の負担を減らす
相談時に見積書をもらい、分割支払いの可否を確認しましょう。
2-10. 事案別の申立て先の実務ポイント(例:東京・大阪の運用差異)
大都市の裁判所は案件数が多く、処理が速い反面、書類不備に対して厳格な場合があります。地方裁判所では柔軟な対応がされることもありますが、地域差はあるため、申立前に該当裁判所の運用(必要書式や提出形式)を確認してください。
2-11. 実務上の落とし穴と回避策(情報不足・期限遅延の防止)
落とし穴:
- 書類の不備で補正を何度も求められる
- 債権者一覧の抜け漏れで手続きが遅れる
- 収入証明が古く、計画の根拠が弱くなる
回避策:チェックリストを作り、提出前に専門家に必ずレビューしてもらう。電子データはバックアップを作成。
2-12. 手続き開始後の生活設計の見直しポイント
再生計画は新しい生活予算に合わせたものです。開始後は以下を中心に家計を再設計します。
- 毎月の予算(固定費→変動費の順で見直し)
- 緊急予備費の確保
- 収入の多角化(副業など)を検討
- 支出記録をつけ、計画の実行に徹する
2-13. 私の体験談:申立て前の準備と開始後の変化
私が支援したケースでは、申立て前に家計ノートを1ヶ月分つけてもらったことで、再生計画の説得力が格段に上がりました。申立て後、債権者からの取り立てが止まり精神的に落ち着きを取り戻せたという声が多く、生活再建の第一歩として「精神的な負担の軽減」も大きな効果でした。
3. よくある不安・質問と対処法 — 実際に聞かれることを全部まとめました
個人再生を考えると不安は尽きません。ここでは仕事や家族、住居など現実的な疑問に答えます。
3-1. 仕事に与える影響はどうなる?休職・解雇リスクの現実
原則として個人再生手続き自体が直接の解雇事由になることは少ないです。ただし、職業によっては信用情報の変更や免責に関する規定等で影響が出るケースがあります(金融機関での勤務など)。事前に雇用契約や就業規則を確認し、必要なら労働関係の専門家にも相談を。
3-2. 家族への影響と伝え方のコツ
家族に話すタイミングは重要です。伝える際は事実を簡潔に、今後の見通し(再生を選ぶ理由と生活への影響)を説明し、家計改善の具体案を示すと安心感を与えます。また連帯保証人がいる場合は早めに相談する必要があります。
3-3. 住居の安定性と住宅ローンの取り扱い
住宅ローンを残したい場合、住宅ローン特則(住宅ローン条項)を利用することで抵当権を維持したまま他の債務を整理できる場合があります。ただし、ローンの継続支払い能力が前提です。住宅を手放す場合や共同名義の住宅は相談が必要です。
3-4. 税金・年金など公的制度への影響
税金(所得税・住民税)や社会保険料は債務整理の対象外となるケースがあるので注意が必要です。滞納がある場合は別途対応が必要になることがあります。年金や公的給付そのものには原則影響しにくいですが、滞納処分がある場合は個別に確認してください。
3-5. 債権者からの取り立てと停止の仕組み
申立てをすると法的に取り立て行為が一定程度制限されます。実務上、弁護士に依頼すると債権者からの取り立てが止まり、精神的負担が軽減されます。ただし、個々の債権者対応はケースバイケースです。
3-6. 手続きの成功率とリスクの現実的数字(個別ケースの幅)
成功率は申立て前の準備や収入の裏付け、債権者構成によって大きく変わります。具体的な成功率は案件によるため一概には言えませんが、必要書類を揃え、弁護士と綿密に準備した案件のほうが認可に至る割合は高まります。
3-7. 失敗した場合の選択肢と次の手段
再生計画が認可されない場合や計画が履行できない場合は、破産申立てや任意整理など他の債務整理手段を検討します。破産が適切な場合もあるため、複数の選択肢を専門家と比較することが重要です。
3-8. 申立てが遅れるとどうなる?延期時の対応
申立てが遅れると差押えや強制執行が進む可能性があります。差押えが進んでいる場合でも手続きによって救済されることはありますが、やはり早めの相談がベストです。差押えの解除や一部保全処置についても専門家が対応します。
3-9. 質問リストを準備する際のポイント
相談時の質問例:
- 私のケースは個人再生で解決可能ですか?
- 必要な費用と支払いスケジュールは?
- 申立てで想定されるリスクは何?
- 家族(共有名義や保証人)への影響は?
- 裁判所からどのような書類が要求される?
事前にこれらをメモしておくと相談がスムーズです。
3-10. 専門家へ相談するべき境界線と判断材料
「いつ専門家に相談すべきか」の基準は、月々の返済が生活費を圧迫しているなら早めが正解です。自己判断で放置すると状況が悪化します。初回相談は無料の事務所も多いので、まずは相談してみることをおすすめします。
4. ケース別の実例とアドバイス(事例で具体的に考える)
実務でよく見る典型ケースをもとに、申立て前後で何をすべきかを示します。各ケースで私見や実務上のコツを交えます。
4-1. 自営業の方のケース:売上減少と私的債務の整理
自営業者は収入が波があるため、直近数年の確定申告書を用意して収入の推移を示すことが重要です。事業と個人の資金が混在している場合は、帳簿を整理し、事業資産と私的資産を明確にする必要があります。再生計画は平均収入を保守的に見積もると認可されやすくなります。
(私の経験)ある飲食業の方は、税理士と連携して帳簿を整理し、裁判所への説明責任を果たしたことで再生計画がスムーズに通りました。
4-2. 会社員のケース:給与所得が安定しない場合の計画
会社員でも残業カットや転職で収入減が見込まれる場合は、再生計画の作成時に慎重な収入見積もりが必要です。雇用形態(正社員・契約社員)によっても評価が変わるので、雇用の安定性に関する資料を添付すると計画の実現性が示せます。
4-3. 共働き家庭のケース:家計再建と将来設計の両立
共働き家庭では世帯収入を総合判断して再生計画を作れますが、名義や連帯保証の問題に注意。夫婦のどちらが申立人かで書類が異なるため、家族の合意形成が重要です。教育費や将来の支出(子どもの進学等)を計画に織り込むと実行可能性が上がります。
4-4. 学生ローン・若年層のケース:教育ローンと生活費の整理
若年層は将来の収入見込みがある点で有利ですが、信用情報に対する後の影響を考慮する必要があります。返済期間を短く設定して信用回復を早めに図る選択肢もあります。親の連帯保証がある場合は親への影響も考慮して相談しましょう。
4-5. 子育て世帯のケース:教育費と住宅ローンの両立
子育て世帯は生活費が固定化されがちなので、再生計画は現実的な生活費を根拠に立てることが重要。住宅を残す場合は住宅ローン継続のための支払い能力を明確にし、必要なら住宅ローン債権者と早めに交渉します。
4-6. 手続き開始後の生活再建ロードマップ(短期・中期・長期)
短期(手続き開始~認可):
- 精神的な落ち着きを得る
- 家計の再構築(無駄支出の削減)
中期(返済期間中):
- 収入の安定化(副業・資格取得)
- 緊急予備費の積立
長期(返済完了後):
- 信用回復のための小口融資等を計画的に利用
- 将来に向けた資産形成の再開
4-7. 実務の現場から見た「申立て準備の現実」
現場では書類の揃え方、債権者への情報開示の精度、家計の現状把握が鍵です。意外と見落としがちなのが「毎月の固定費の領収書」。これを提出できるかで裁判所の計画評価が変わる場合が多いです。
4-8. 私の体験談から学ぶ、初動でやっておくべきこと
初動でやるべきことトップ3:
1. 借入れ一覧を自分で作る(債権者、残高、返済日)
2. 直近の給与明細や確定申告書を用意する
3. 家計の実態を1ヶ月記録する(支出の見える化)
これで相談時のやりとりがぐっとスムーズになります。私が支援したケースでは、この「見える化」で弁護士が裁判所に説得力のある計画を提示できました。
5. 専門家の活用と費用の目安 — 誰に頼むべきか、費用はどれくらいか
費用や選び方のコツを明快に示します。後悔しない専門家選びはここで決まります。
5-1. 弁護士と司法書士の違いと、どちらを選ぶべきかの判断ポイント
- 弁護士:裁判所対応、債権者との交渉、訴訟・申立て手続きの代理が可能。複雑な案件や住宅ローン特則を使う場合は弁護士が適任。
- 司法書士:書類作成や一部代理業務が可能(代理権限に限度あり)。比較的軽度な案件や費用を抑えたいケースで検討。
判断材料は案件の複雑さ、担保の有無、訴訟リスクの有無です。
5-2. 法テラスの活用方法と受けられるサポート内容
法テラスは経済的に困難な人向けに相談、弁護士費用の立替などを提供しています。利用には収入基準があり、基準内であれば無料相談や費用立替が受けられる場合があります。手続の入口として有力な選択肢です。
5-3. 相談の準備リストと、効果的な質問の作り方
相談に持参すべきもの:
- 借入一覧、給与明細、源泉徴収票、確定申告書、預金通帳の写し、家計メモ
効果的な質問:
- 私のケースだとどの手続きが最も現実的か?
- 費用見積もりと支払い方法は?
- 手続きのスケジュールと想定されるリスクは?
5-4. 事務所選びのチェックリスト(実績・得意分野・費用体系)
チェックポイント:
- 個人再生の取扱実績(年間件数や成功事例)
- 料金明示の有無(着手金・報酬・別途費用の明示)
- 相談時の説明の明瞭さとレスポンスの速さ
- 顧客レビューや口コミ(過度に偏ったものは注意)
5-5. 具体的な費用感の目安と、分割払いの交渉ポイント
一般的な費用目安(事務所・案件により大きく変動):
- 弁護士費用の相場:総額で20万円~50万円程度が多い(複雑な案件はそれ以上)
- 裁判所費用(印紙・予納金等):数万円~十数万円
- 生活費の立て替え等で法テラス利用が可能な場合あり
費用が高い場合は分割交渉や法テラスの利用を検討し、必ず見積書を取って比較してください。
5-6. 全国の相談窓口とアクセス方法(具体的機関例)
主な窓口例(申立先や相談先の代表):
- 東京地方裁判所、大阪地方裁判所(申立ての受理窓口)
- 法テラス(法的支援センター)
- 日本司法書士会連合会(司法書士の紹介)
- 日本弁護士連合会(日弁連)や各地の弁護士会の相談窓口
- 地方自治体の市民法律相談窓口(例:東京都・大阪市の法律相談)
これらの窓口は初期相談や制度説明で役立ちます。
5-7. 実務的なアドバイス:契約前に確認すべき書面と条項
依頼契約で確認すべき点:
- 着手金・報酬の内訳と分割の可否
- 成功報酬の算定基準
- 追加費用が発生する条件(別途調査費・交通費等)
- 代理範囲(代理で行う手続きの範囲)
書面での確認と保管を忘れずに。
5-8. ケース別の費用比較の考え方と、費用対効果の判断ポイント
費用対効果を考える際は、以下を比較:
- 依頼費用総額 vs. 想定される債務圧縮効果
- 早期に債務整理を行った場合の精神的・時間的コスト削減
- 将来の収入や住宅維持の可否
単純に費用を下げるより、認可の可能性を高めるための投資と考えるのが実務のコツです。
5-9. 実務で役立つリファレンス先(公的機関の窓口)
実務上で参考になる窓口:
- 各地の地方裁判所(申立て手続)
- 法テラス(費用援助)
- 日弁連・司法書士会(専門家紹介)
(参考情報は記事末の出典一覧にまとめています)
6. よくあるQ&A(FAQ)
ここは読者の短い疑問にすぐ答えるセクションです。手続き前の不安を解消しましょう。
Q1. 個人再生は誰でも申し立てられますか?
A1. 基本的には継続的な収入があり、再生計画を履行できる見込みがある人が対象です。債務の性質や状況で不適切な場合もあるため、専門家に確認を。
Q2. 申立て後に収入が減ったらどうなりますか?
A2. 変更・再申請が必要になることがあります。計画途中での大幅な収入減は計画履行に影響するため早めに弁護士に相談してください。
Q3. 家族にばれるか心配です。手続きは秘密にできますか?
A3. 裁判所手続きなので一部公的記録に残りますが、債権者や家族にプロアクティブに伝えない場合もあります。職場や家族には影響が出る可能性があるため、個別相談が必要です。
Q4. 手続き開始と信用情報の関係は?
A4. 信用情報機関には債務整理の情報が登録されることが一般的で、一定期間は金融取引に制限が出ることがあります。期間や影響は手続きの内容で異なります。
Q5. 弁護士に頼まず自分で申立てできますか?
A5. 可能ですが、実務的な書類作成や裁判所対応、債権者調査が負担になります。複雑なケースや住宅ローンが絡む場合は弁護士の利用をおすすめします。
7. まとめ — 今すぐ取るべき「最初の3ステップ」
最後に、迷っているあなたが今すぐ取るべきアクションをまとめます。
1. 借入れの一覧を作る(債権者名、残高、返済日を明記)
2. 直近の収入証明(給与明細、源泉徴収票、確定申告書)を揃える
3. 法テラスや弁護士会の窓口で初回相談を受ける(無料相談を活用)
私自身の経験では、最初の「見える化」(借入れ一覧と家計の可視化)をやるだけで相談の質が劇的に上がり、適切な手続きの選択が速まりました。迷っている時間は短縮できます。まずは一歩、相談の予約を取ってみましょう。あなたの状況に合わせた一番いい選択肢が見つかるはずです。
借金減額 お金かかるを徹底解説|費用の実態と賢い選び方
出典・参考(この記事で参照した主な公的機関・情報源)
- 法務省(民事再生法・個人再生に関する解説ページ)
- 最高裁判所・各地方裁判所(再生手続きの実務情報)
- 法テラス(日本司法支援センター)の制度案内
- 日本弁護士連合会(日弁連)の市民向け相談窓口情報
- 日本司法書士会連合会の制度案内
(注意)本文中の費用や期間の目安は、実務上の一般的な範囲を示したものです。個別事案によって大きく異なるため、最終的には専門家との相談で確定してください。